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【漫画】鬼滅の刃21 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

絶望を断つ刃となれ

情報

作者:吾峠呼世晴

試し読み:鬼滅の刃 21

ざっくりあらすじ

上弦の壱の討伐に成功したが、あまりに大きな被害を出した鬼殺隊。そんな中、いよいよ鬼舞辻無惨が動き出す。

感想などなど

第二十巻、「私は一体何の為に生まれて来たのだ 教えてくれ 緑壱」と、弟に与えた笛を残して消えた上弦の壱・黒死牟。

「何故私は何も残せない」

「何故私は何者にもなれない」

「何故私とお前はこれ程違う」

鬼とは思えぬ嫉妬・後悔・怨嗟の吐露が書き連ねられていく終盤は、読者の感情に訴えかけてくるものがある。人であることを捨ててまで、何百年と強さを追い求めた彼の執念が行き着いた先に待っていたものが、空虚なむなしさだったのだから。

そんな男の執念を上回ったのは、人としての覚悟。たった数十年しか生きられない――痣を出した場合は二十代――で死んでしまう人が、何世代もかけて積み重ねた歴史の重みが、この勝利をもたらしたのだろうと思う。

しかし、その被害は深刻であった。鬼を喰ってでも鬼殺隊として戦った不死川の弟、霞柱・無一郎が死亡し、岩柱と風柱もかなりの深手を負っている。内臓が溢れ出しそうな状況で、これ以上の戦闘は決して楽ではないだろう。

そんな第二十一巻は、死んでいく者達との別れから始まっていく。身体が半分になってしまった弟に、何度も声をかけ、死なないでくれと願う兄の姿は、いきなり涙腺を責めてくる。家族を奪わないでくれという必死な願いを訴える兄……そんな兄と同じ願いを持っていた弟……二人は互いに死んで欲しくないがために鬼殺隊に入り、鬼と戦っていたのだ。

悲しいシーンではあるが、まだ戦いは終わりではない。本丸の鬼舞辻無惨が残っている。

 

この第二十一巻では無惨との戦闘が始まっていく。これまで珠世さんが薬で押さえ込んでいたが、強くない鬼殺隊を喰らうことで体力を回復。ついでに珠世さんも殺害。万全の状態で、鬼殺隊を自らの手で皆殺しにすることを誓った。

そんな鬼舞辻無惨と最初に相対するは、炭治郎と水柱・義勇の二人。いきなり戦闘かと思いきや、無惨は独自の持論を語り出す。

「私に殺されることは大災に遭ったのと同じだと思え」

「死んだ人間が生き返ることはないのだ いつまでもそんなことに拘っていないで 日銭を稼いで静かに暮らせば良いだろう」

「鬼狩りは異常者の集まりだからだ」

……というように。感情を逆なですることが上手い。それに対する炭治郎のアンサーはたった一言。

「無惨 お前は 存在してはいけない生き物だ」

これまでどんな敵であろうと理解しようと努め、狂気じみた正義を掲げていた彼が、本気で怒り憎悪すると表情が無になってしまうらしい。それでも冷静さを失わせず、無惨と戦う覚悟を決める。しかしそんな覚悟を上回る圧倒的な速度と射的距離の前に、片目を潰されてしまう。水柱もギリギリでいなしているようだが、攻撃を受けてしまうのも時間の問題であろう。

そもそも首を斬っても死なない奴だ。日の光がある場所まで引きずり出すために、夜明けまで時間稼ぎをするというのが作戦であった。しかし時間稼ぎをしたところで、日が届かない無限城内では意味がない。

時間稼ぎと同じく、この無限城から無惨を引きずり出す必要があった。

そんな希望の見えない状況で、とてつもないファインプレーをする男が現れる。その男の名は愈史郎。珠世さん大好き鬼で、血鬼術で作った眼を配り、鬼殺隊を助けている人物だ。

彼は珠世さんを殺されたことで、無惨に対する怒りを露わにし、かなり無茶な作戦を実行に移す。

果たして、無惨との戦いに勝利することができるのか? 絶望と希望が入り乱れ、二転三転する戦いの模様の詳細は、是非とも読んで楽しんで貰いたい。

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