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【漫画】鬼滅の刃9 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

絶望を断つ刃となれ

情報

作者:吾峠呼世晴

試し読み:鬼滅の刃 9

ざっくりあらすじ

音柱・宇髄天元に連れられて、鬼が潜むとされる遊郭の調査に乗り出した炭治郎達。先に調査にしていた天元の妻であるくノ一三人が消息を絶っていたのだが、なかなか鬼の消息は掴めない。そんな中、花魁達に鬼の魔の手が忍びよる……。

感想などなど

炎柱・煉獄さんが無限列車の乗客全員を守って死んだ。その後、鬼殺隊メンバーとして活躍している様子が描かれていくのだが、上弦以下の雑魚鬼との戦闘は描写すらされずカットされていく。

つまり、ここから先は全て上弦の鬼との戦闘である。

上弦の鬼……鬼殺隊で最も強いとされている柱ですら負けてしまう。ここ百年は顔ぶれが変わっていないという奴らである。煉獄さんが戦った上弦の参・猗窩座には、炭治郎達は手も足も出なかった。

その頃よりも成長した炭治郎達の刀は、果たして上弦の鬼の首に届くのか?

と、その前に。まずは人間社会に上手い具合に溶け込んで、姿を隠している上弦の鬼を見つけ出すことから戦いは始まっていく。その上弦の鬼の尻尾を掴んだとして、音柱・宇髄天元に連れて行かれた先は、善逸が喜びそうな遊郭であった。

 

このブログに来た小学生、中学生の方はブラウザバックしてお父さん、お母さんに「遊郭って何?」と無邪気に聞いてみよう。大変に困った表情を見ることができるはずだ。

そう、遊郭というのは大人が子供に聞かれて困る場所である。

おめかしをした女性が男性を楽しませる場……大人の遊園地……まぁ、色々と遠回しな表現が聞こえてくる。炭治郎はそもそも遊郭という場所を知らず、伊之助も言わずもがな。善逸は想像通りに楽しみに期待胸膨らませているらしい。

そこに鬼が潜んでいると睨んだ音柱・宇髄天元。

大抵の人は柱に良い印象は抱いていないと思われる。蜘蛛の鬼を倒した後、鬼を連れていた炭治郎を処刑しようとしていた柱達の様子が思い浮かぶからだ。ちなみに、その時の音柱は「派手に首を落としてやる」と意気込んでいた。

しかし、読み進めていけば音柱・宇髄天元のことが好きになっていく。なにせ滅茶苦茶いい人なのだ。

「いいか? 俺は神だ! お前らは塵だ!」

「まず最初にそれをしっかりと頭に叩き込め! ねじ込め!」

「俺が犬になれと言ったら犬になり猿になれと言ったら猿になれ!」

「猫背で揉み手をしながら俺の機嫌を常に伺い全身全霊でへつらうのだ!」

九巻冒頭からいきなり印象に残る自己紹介をしてくれる天元さん。暑苦しい人だな……と思うかもしれないが、最後には好きになることをお約束しよう。

そんな彼が遊郭に鬼が潜んでいると睨んだ理由は、自分の婚約者であるくノ一を三人、遊郭に忍び込ませて、定期的に送らせていた文通が途絶えたから。彼女達は決して弱くない、にも関わらず三人が同時に連絡が取れなくなった。そのことを心配し、急いで適当な部下(炭治郎達)を引き連れて助けに向かった訳だ。

そして遊郭を調査するために、炭治郎達に女装させて遊郭の遊女として働かせようとする天元さん。ひょっとするとアホなのかもしれない……と思ったら上手くいくのだから良く分からない。炭治郎は炭子ちゃんとして、善逸はブスとして、伊之助は美女として潜入することに成功(?)する。

そうして調査していると、出てくる出てくる鬼のいるような痕跡。匂いや音や感覚で、この遊郭のどこかにヤバい鬼がいることが伝わってくる。しかし、誰が鬼なのかまでは分からない上手い痕跡の隠し方をしている。

そして満を持して現れる上弦の鬼が、遊郭に潜んでいるに相応しい美貌を持っているのだから、これまでの鬼とは全く違った緊張が生じることとなる。美しき人の造形から繰り出される攻撃、第一発見者である炭治郎を苦しめるスピードに威力は上弦の鬼と呼ぶに相応しい。

 

遊郭に潜んでいた上弦の鬼の強さを見せつける場面であるが、炭治郎の成長に見せ所でもある。その強さのパワーバランスの見せ方が、この漫画は非常に上手く感じだ。炭治郎があっさりと勝つようでは上弦の鬼としての威厳は保てない。逆にあっさりと炭治郎が死ぬようであれば「これまでの修行は何だったんだ?」ということになる。

力が拮抗しているようでいて、上弦の鬼の威厳を落とさない理由付けが上手くできている。主人公もしっかりと活躍しつつ、他のキャラクターもそれぞれの役割を演じて活躍するストーリーの構成は見事だと思う。

改めて良い漫画だと思った。

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