工大生のメモ帳

読書感想その他もろもろ

【映画】鬼滅の刃 無限列車編 感想

※ネタバレをしないように書いています。

その刃で、悪夢を断ち切れ

情報

監督:外崎春雄

原作:吾峠呼世晴

ざっくりあらすじ

蝶屋敷での修業を終えた竈門炭治朗たちは、短期間のうちに四十人以上が行方不明になっているという『無限列車』へと到着する。そこで炎柱の一人である煉獄杏寿郎と合流し、鬼との戦いに挑む。

感想などなど

まず感想を語る前に、ブログ主は「鬼滅の刃」アニメシリーズを視聴済みで、しかし漫画の方は一巻を無料サービスで読んだだけ。つまり無限列車編に関する前情報はほぼゼロの状態で映画に臨んだことを記載しておく。

そして、「鬼滅の刃」に関する説明などいらないかもしれないが、超簡単にまとめると「家族を鬼に殺された竈門炭治郎が、生き残ったが鬼となってしまった禰豆子を人に戻すために、無惨に近しい鬼を倒して血を集めるために鬼殺隊員として依頼をこなしていく」というストーリーとなっている。

その過程でイノシシ頭の伊之助だったり、寝たら強い男・善逸だったりの同期が仲間となったり、禰豆子が超強力な戦力となっていたりとするが、それらはアニメシリーズを視聴して欲しい。超作画で描かれる戦闘シーンの数々は、文章で語るには無理がある。

そんなアニメシリーズを経て、始まった劇場版。オリジナルストーリーという訳ではなく、原作の続きをそのままやっただけ……ではあるが、アニメシリーズではあまり活躍の機会の与えられることのなかった柱や、パワハラ会議で潰された十二鬼月の下弦に活躍の場が与えられていく。

アニメシリーズ時点で面白い作品だったが、もしかすると、この無限列車から先の方が作品としては盛り上がっていく場所なのではなかろうか?

 

この映画は冒頭からして驚かされる。

なにせブログ主、最初のシーンを実写化と本気で思ってしまったのだ。木々生い茂る背景、そこにふっと現れる「お館様」の姿で、「あぁ、これはアニメだ」と実感させられる。その他、美しい雪景色といった背景や、夢の中の世界に広がる幻想的な心象風景に至るまでもが丁寧に描かれている。劇場という大画面で見る価値のある映像美だろう。

また、アニメシリーズ同様に戦闘シーンにも力が入る。

主人公である炭治郎は、水の呼吸と呼ばれる呼吸法を用いて鬼と戦う。この呼吸法は使用者の身体能力を大幅に押し上げ、かつ刀に水を纏わせて攻撃力を増すことができる。この独特な設定が、アニメーションには良く映える。

またアニメシリーズとの大きな違いは、炎柱である煉獄杏寿郎という最強格の闘いを見ることができる点にある。炎柱と呼ぶだけあり、彼が扱うのは炎の呼吸だ。彼が振るう剣には炎が纏い、そして圧倒的な力量を兼ね備えている。

強さ、しかもその力量差を表現するのはとても難しい。この映画では言葉による淡々とした説明もかなり多いが、炭治郎や敵である鬼の表情なども含めた全てで表現しようとしているようにも感じた。だからこそ炎柱である煉獄さんの強さが際立ち、敵のヤバさというものにも納得がいくようになっている。

 

そんな煉獄さんの活躍というのも、本作の魅力の一つであることには間違いない。しかし、ブログ主としては『誰一人として欠けていては勝つことのできなかった総力戦』となっている物語としての構成を語りたい。

もう一度言うが、この『無限列車編』において無駄なキャラというものはいない。皆が自身のできることをしていたのだ。

無限列車編の敵は、アニメシリーズの第十二話にて無惨様によるパワハラ会議を唯一切り抜けた魘夢が敵として立ち塞がることになるが、こいつの血鬼術(いわゆる能力)は相手を眠らせ、夢を操ることができるというもの。その能力がかなり厄介で、炎柱含めた全員が、一度は眠らされてしまう。

そして見せられる夢の世界。それぞれが現実には戻りたくないと考えてしまうような夢のような世界が、そこには広がっている。炭治郎の場合は、かつて皆殺しにされた家族との平和な生活が。善逸の場合は、禰豆子とのいちゃいちゃ生活が……というように。この夢の世界で「禰豆子喋ってるやんけ」とか、「炎柱さんだけ見せられてる夢の趣旨違くない?」とか、「伊之助……お前はそれでいいのか?」とか言いたいことはあるが、それは置いておこう。

とにかく鬼殺隊は追い込まれた。

炭治郎がいなければ、まず間違いなく全滅であった。さらにいうなれば、鬼だからと見過ごされていて眠らされていなかったのだろうか? 禰豆子がいなければ詰んでいた。もっというなれば眠っていると強くなるという特異体質の善逸がいなければ勝てなかった。目を見ることで眠らせてくる相手の技を、くぐり抜けられるかぶり物をした伊之助がいなければ、ギリギリの戦いを制することは叶わなかった。

また敵である鬼にも盛大な拍手を贈りたい。やっていることはゲスであり、人の道を外れた方法ではあるが、鬼としては正しい生き様なのであろう。最後の最後まで敵として、いや、鬼として立ち塞がって、全力で攻撃を仕掛けてきた。

全てがギリギリで、どこまでも気の抜けない戦闘シーンの連続。それが映画という尺に隙間なく詰め込まれた感じがたまらない。

 

原作はこの無限列車の後も続いていくということもあり、映画の終わりとしては「冒険はまだまだ続く」的な締め方となっている。しかし、『無限列車編』としての結末として、炎柱・煉獄杏寿郎という漢にとって一つの締めくくりとして考えると、完全燃焼することのできた結末ではないだろうか。

鍛錬を重ね、武を究めた一人の男の背中はあまりに格好いい。炭次郎達も、この背中を目標にしつつ、戦いはまだまだ終わらない。続きはアニメシリーズか映画か、定かではないが期待してしまうクオリティであった。