※ネタバレをしないように書いています。
魔女。そう、私です。
情報
作者:白石定規
イラスト:あずーる
ざっくりあらすじ
灰の魔女・イレイナが世界を旅する物語。
「ある女性の悩み」「安らかなまどろみ」「ある日の新聞」「ぶどう踏みの少女」「物々語:小賢しい師匠と賢しい弟子」「甘菓子と新米旅人」「物々語:賢しい弟子と生ける者」「十年目の終戦」「物々語:廃墟に蔓延る」「狼男もしくは別の何かの話」「遡る嘆き」「旅人が刻む壁」「切り裂き魔」「ありとあらゆるありふれた魔女の物語」
感想などなど
「ある女性の悩み」
お客様は神様であると良く言います。しかし、それはあくまで接客する上での心構えの話であって、実際に神様であるということではありません。比喩です。直喩です。暗喩です。どれなのか忘れましたが、とりあえずそんな感じの某です。
接客をしていると、自称神様にたくさん出会うことができます。世間では八百万の神という概念のある国もあるそうですし、日常の中に神様が溢れている可能性も否定できませんが、人から信仰されない神など必要あるのでしょうか? いや、ありません。
そんな客様にこびへつらってへこへこと頭を下げているようでは、精神衛生上にもよろしくないはずです。やはりここは、自己というものを全面に押し出した接客というものをしなければいけないでしょう。そうです、そうに決まってます。
ということでこのブログも好き勝手書くことにしました。いやぁ、学びあるラノベで助かりました。感想? 知らんよ、買って読め。
「安らかなまどろみ」
夢というのはとても不思議な存在です。とある極東の国における昔の話では、夢の中に現れた人は私のことが好きということを意味していたり、とても儚いものの象徴のようであったりと、夢というものに対する印象というものは時代によって変わっていくようです。科学が発展した国においては脳内の記憶を整理するためのものであると言われたりしますが、真相はどうなのでしょう。
この物語では夢により滅んでいく国を描いています。科学の国と魔法の国とでは、夢というものの存在も大きく変わってしまっているようです。外から見たその国の惨状は、たった一人を除いて目を覚ますことのない人の群れでした……もう死体の山という表現でも大差ないでしょう。
なにせ横たえられた人達は、もう二度と目を覚まさないのですから。正確に申すのであれば、二度と夢の世界から帰って来ないというべきでしょうか。そんなに夢の世界は素晴らしいのでしょうかね。現実から逃れた夢の世界は、いずれ現実になってしまうと考えてしまうのは物語の読み過ぎなのかもしれません。
「ある日の新聞」
偏向報道、嘘報道なんでもござれの新聞社の話。嘘情報を垂れ流し続けたところで得はありませんよ。
「ぶどう踏みの少女」
ぶどうを踏んで、アレコレしたらワインができます。常識ですね。今回訪れた村……の隣村では、美少女が踏んだぶとうを使って作ったワインを売り出していました。味は良く分かりませんが、美少女が踏んだということで大盛況。この世の中は結局変態さんしかいいないのです。
それに対抗すべく、胸の乏……美しい魔女の踏んだワインで対抗すべく、灰の魔女にして超絶美少女のイレイナに、ぶどうを踏んでいただくようお願いしに来ました。そんな面倒なことしたくないイレイナでしたが、隣村の美少女がイレイナを煽りに煽りまくってことで、彼女の対抗心はメラメラと燃え上がり、最終的には全部滅茶苦茶にしました。
まぁ、いつも通りの話ですね。
「物々語:小賢しい師匠と賢しい弟子」
小賢しい師匠というのはフラン先生で、賢しい弟子というのはイレイナのことです。つまり弟子入り中の小話です。あまりに賢くて美少女のイレイナは、特訓の合間に『物に命を吹き込む薬』なるものを開発してしまいました。やはり天才なのでした。
わた……色んなものにかけては反応を楽しんでいた訳ですが、フラン先生はその薬を貰い、お金に換えて大量のパンを買って来てあげると言い出します。しかし、この小賢しい師匠がそんなことしてくれるとは思えません。
そこで賢しい弟子は考えるのです。やはり平常運転のイレイナでありました。
「甘菓子と新米旅人」
旅をするにも初めは誰もが新米です。今回の話では旅に不慣れな少女に、イレイナが旅の作法を教えていきます。まぁ、フラン先生の御指導の下、我慢をせず、ただ欲望に正直に生きる彼女の生き様を真似できる人は……早々いないと思っている時期がありました。
「物々語:賢しい弟子と生ける者」
賢しい弟子とはイレイナのことで、生ける者とは『物に命を吹き込む薬』により人型に変化を遂げたアイテムのことです。持ち物は持ち主に似ると言いますが……あれ、何か違う気がする。とにかく生ける者となったアイテムは、それはそれはイレイナに似ているのでした。つまり美人ということ。
美人が二人……ふむ、いい画になりそうだ。
「十年目の終戦」
戦争は例え終わっても、戦災という形で国を蝕み続けます。歴史に記憶に刻まれ続ける死と硝煙と血なまぐささは、恨みや憎しみとなってまた別の戦争を産む火種になりかねません。しかし、この話で描かれる国は、それらを全て美味い形で昇華させることに成功した奇蹟のような国なのです。
ラストシーンは希望に満ちてて良いですね。
「物々語:廃墟に蔓延る」
イレイナという美人魔女の最大のピンチです。廃墟に蔓延る……ここで蔓延っているのは、命を与えられた物でした。元気に喋り、強大な魔力を持って人を操り、その胸中に溜め込み続けた人への悪意を一心にぶつけてきます。
そんなイレイナを救えるのもまた、物だけなのです。後読感のたまらない作品でした。
「狼男もしくは別の何かの話」
結論から言ってしまえば狼男ではありません。ネタバレですがチワワ男です。想像して下さい、顔がチワワで首から下が人間の何かを。恐さよりも困惑が勝ることでしょう。イレイナも同感でした。そんなチワワ男を利用して小銭を稼ぐといういつも通りの話です。流石は策士にして腹黒魔女、やることが違います。
「遡る嘆き」
変えたい過去があったとして、魔女が途方もない時間をかければそれを可能にできるとすれば、あなたは魔女に何をお願いするでしょう。今回訪れた国は、とある殺人鬼の熱狂的ファンが多くおり、殺人が起きた現場は聖地として多くの人が訪れているような所でした。
それをただ一人、よしとしない魔女がいました。その理由を聞いてみれば、その殺人鬼というのがかつての親友で、元々は心優しい少女だったようです。しかし両親を強盗に殺されたために豹変してしまい、誰から構わず殺してしまうような殺人鬼になってしまったとのこと。
その過去を変えたい。そのためにイレイナも一緒になって十年前へと飛びました。そこで明かされる衝撃の真実。まさしく嘆き悲しいエピソードです。
「旅人が刻む壁」
ただの壁を観光名所にするために、とある魔女は助言しました。「旅人が好き勝手に色々書き込めるようにすればどうか?」と。その言葉に従って、壁には多くの旅人が文字を刻みつけるようになったのです。
その数年後、とある二人の魔女がやって来ました。かつてよりも増えた壁の文字。それに意味があるのかと聞かれれば、深い意味はないのです。
そのさらに数年後、とあるストーカー魔女がやって来て、さらに助言を残しました。「旅人だけでなく現地の人も文字を刻みつければどうか?」と。その言葉に従って、国の人達は文字を壁に刻んでいきました。
その数年後、イレイナがやって来ました。彼女が物語としてのオチを担当します。彼女が買ったお土産は、きっととあるストーカーを大いに喜ばせることでしょう。
「切り裂き魔」
女性の命とも呼ぶべき髪を切り去って行く切り裂き魔が現れました。しかし、イレイナの美しい灰色の髪を切り取ったからには命なんてありません。待っているのは死あるのみ。最後の笑顔があまりに恐い。
彼女は一番怒らせてはいけない人を怒らせてしまいました。
「ありとあらゆるありふれた魔女の物語」
この物語のあらすじを説明しますね。
まず主人公のイレイナが、「あらゆる願いを叶える国」に入りますと、ハイなイレイナと出会いました。そして二人で何もない国を探索していると、黒幕っぽいイレイナと出会い、宿代は無料、でも三日で出て行って貰うというように言われました。怪しいですが誰もいないし、金をせびられるようなこともないため、宿も無料で宿泊。次の日もさらに探索を続けます。そして王宮に行くと、アホの子のイレイナと、女の子大好きなイレイナと、胸の大きさにコンプレックスを抱いたイレイナと、やさぐれたイレイナと、いやらしいイレイナと、痛いイレイナと、恋する乙女のイレイナと、心に深い闇を抱えたイレイナと、心に深い闇を抱えたイレイナと、心に深い闇を抱えたイレイナと、外国人かぶれのイレイナと、ゲル状のイレイナと、グールになったイレイナと、知的になったイレイナがいました。
もっとイレイナがいるようなので、多分一人くらい持って帰ってもバレないですね。良い国です。