工大生のメモ帳

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魔女の旅々6 感想

【前:第五巻】【第一巻】【次:第七巻
作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

魔女。そう、私です。

情報

作者:白石定規

イラスト:あずーる

ざっくりあらすじ

灰の魔女・イレイナが世界を旅する物語。

「競箒」「盗人と母」「誠実な政治家」「病と魔女とほうきの物語」「呪われた奴隷」「こども魔女のイレイナ」「女心を知るためには」「アリアドアの七日間」

感想などなど

「競箒」

 競馬とか、競輪とか、競艇とか同じノリで行われる競技・競箒(つまりは賭け事である)。ただ早さだけを純粋に極めた競技であり、たった十一人しかいない競技人口はその難しさを物語る。

そんな競箒に挑む最年少の少女がいた――彼女の名はドロシー。

そして彼女は最年少の冠だけでなく、これまで誰一人として達成することのできなかった快挙である十連勝を目前に控えた九連勝中なのだという。そんな若さと強さは嫉妬を産むもので、彼女を蹴落とすべく『二人ペア』という特別ルールが設けられてしまいました。

先ほども述べた通り、この競技人口は十一人。どうしても一人余ってしまいます。もう物理的に競技に参加させないって、なりふり構わない感じが凄まじい。そんなドロシーはたまたま魔女であるイレイナと出会いました。

魔女=箒に乗れる=早い。

この三段論法、ドロシーはイレイナにペアになってもらうようにお願いし、ドロシーの状況と自身の過去を重ねてしまったイレイナは快諾。

 

「盗人と母」

 強盗してたら母親もついて来ちゃったというアンジャッシュ的ノリのギャグ。オチまでギャグノリで進めていく内容となっている。

 

「誠実な政治家」

 選挙は結局のところ人気投票である。悲しい話ではあるが、演説力が高い方が勝ってしまう。その他アピールやマスコミの力で押し上げられれば負ける要素なし。実際の所、誠実な政治家というものは、勝手に作り上げられたイメージであるのだ。

このイレイナが訪れた国では、若手のマシューとベテランのバーナードの二人が大統領の席を争っていた。この中でマシューという男は、『誠実な政治家』として特に若者の人気を集めていたそうな。

しかし、彼の過去を少し見れば、妻がいながら秘書の女性と浮気している。どうにも誠実とは程遠いような気がしないでもないが、今はそんなことを反省し、国のために誠心誠意尽くすために頑張ろう……としているようだ。

しかし、それは嘘だと疑う新聞記者がいた。

その記者は国に訪れていたという極悪非道な魔女・イレイナを脅迫し、秘書に浮気されても離婚することなく献身的に夫を支え続けた妻に話を聞いて、その嘘を暴こうとするのでした。

……アレ、何故イレイナを脅迫する必要があるんや? どうやら魔女の魔法か、薬かで妻に嘘をつかせないようにするようです。新聞記者に胸中にあるのは、正義の心か、はたまた別の感情か?

きっと彼なりの正義でしょう。

 

「病と魔女とほうきの物語」

 イレイナは風邪を引くと幼児退行するようです。そんなイレイナを甘やかしつつ薬を調達するために奮闘するイレイナ(箒)の話。イレイナの可愛さだけでお釣りが来る内容でした。

 

「呪われた奴隷」

 奴隷として売られた少女。奴隷なのですから、ご主人の命令は絶対で、逆らうことなど許されません。だからこそ何だかんだで肉体関係を結ばれるというのは、決して珍しいことではないのでしょう。

しかし、その呪われた奴隷とそのような関係を結ぼうとした者は、一人の例外なく死んでいきました。どうやら体液や肌が毒で、触れた相手を殺してしまう呪いがかけられていたようなのでした。

そんな彼女に恋をしてしまった男がいた。彼は彼女を買い取って、奴隷と主人の関係性ではなく、恋仲になろうとした彼にとって、それはあまりに障害の多いことであった。まず彼女に根強く残った奴隷として生きてきたことによる恋愛感情の欠如、触れれば死んでしまうという呪いの存在。

そんな二人の恋の結末が、この話では描かれている。

 

「こども魔女のイレイナ」

 イレイナに「怪しい薬を作って売っている子供を懲らしめて欲しい」との依頼が舞い込みました。さて、そんな子供の情報を聞いていくと、どうやら既に一服盛られてしまっている御様子。次第に身体が縮んで、子供の姿となってしまったイレイナ。依頼をこなしつつ、自身の姿を元に戻すために奮闘します。

まぁ、見た目は子供、実力は魔女であるイレイナにとって、薬による影響はさほど大した障害とはなりませんでした。薬を作って売っている子供に懲らしめるべく、彼女は幻覚を見せるマッチを売りさばくのでした。

……ん? 何故そうなった? という疑問も浮かぶでしょうが、マッチばかりが売れていき、自身の薬の売れ行きが芳しくなくなったその子は、魔女に対して攻撃を仕掛けていきます。しかしどうやら、魔法事態はあまり上手くないようで、全くもって相手になりません。

そんな戦いの決着は――話のオチは読んでからのお楽しみということで。可愛い話でした。

 

「女心を知るためには」

 女心が分かりません。そんな方に、女心を知るための方法をお教えします。

女装です。

……そんなアドバイスを童貞のインキュバスに教えてあげたイレイナ。酷い話である。

 

「アリアドアの七日間」

今回は魔法を教える学校に潜入し、教授の薬の実験台にされている女の子を救い出す話。とても完結明瞭なあらすじとなってしまったが、読み進めてみると時間軸がごちゃまぜにして描かれており、少しばかり分かりにくい内容となっている。

なぜ時間軸通りではないのか?

何を隠そう、この話におけるドンデン返しが、そこにはあるのだ。また全く関係ないように思われた別の話の設定も重要になってくるため、第六巻の締めとして相応しい内容となっている。

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