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魔法科高校の劣等生1 入学編〈上〉 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

劣等生……?

情報

作者:佐島勤

イラスト:石田可奈

ざっくりあらすじ

魔法を科学技術として昇華した現代。『魔法科高校』にある兄妹が入学する。

兄は、ある欠陥を抱え劣等生として。

妹は、才色兼備な優等生として。

感想などなど

「お兄様!」はもはやネタとして扱われ、アニメ・原作共に、見たことも読んだことがない自分でも、何となく知っていた本作。チートを持った主人公はただそれだけで叩かれることもある昨今で、「批判するなら読んでからしろ」という持論を持つ自分は、「つまらなかったら感想書かなければいいや」という軽い気持ちで読み始めた。

結論としては「言われてるほど酷くないだろ」というものだったので、無事感想を書くことができる。

 

まず「主人公は劣等生なのか?」という誰もが抱くであろう疑問に対して答えておく。

結論から言ってしまえば「彼の能力は点数としては数値化できない」

まず簡単な世界観を説明しなければなるまい。超ざっくりと説明すると「魔法が使える世界(しかし科学で制御する)」といった感じだ。だからこそ筆記試験は、魔法に関する科学技術であって、実技は実際に魔法を使ってみるというものだ。

そんななか、主人公の筆記試験は満点で、実技は下の下。問題は実技の部分だ。実技で評価される項目は「魔法を発動する速度」「魔法式の規模」「対象物の情報を書き換える強度」の三つ。主人公はその三つの点数がどれも低い。

しかし、他変数化……つまり一度に多くの魔法を同時に処理する能力が異様に高いのだ。また、体術もめっぽう強い。

だからこそ「点数として評価はできないが、戦闘においては最強」の主人公ができあがったのだ。

 

本作の面白い点は三つ。「作り込まれた設定」と「主人公の心の声」と「妹の存在」だろう。

「作り込まれた設定」に関しては、ここに書き切るには字数が多くなりすぎる。魔法が科学となった歴史や、その魔法を利用するデバイスや理論に至るまで、わざわざ説明してくれいるのだ。戦闘の一つ、一つの動きで使われた魔法まで説明されているのには驚いた(個人的には『されど罪人は竜と踊る』を思い出す)。読み続けていると、「あぁ、これはあの魔法だな」と推測できるようになってしまうのだろうか……。

まぁ、そんな説明が長すぎるという人もいるだろうし、そう思うような人はきっとこの作品は合わない、と自分は思う。

次に「主人公の心の声」だ。

ライトノベルにおいて多くの読者がストレスを感じるのは、主人公の言動だろう。例えば「性格が悪い」「頭が悪い」などなど……結局は主観なのでその境界線は人それぞれだが。

本作は主人公の心の声が、かっこ書きだったり、地の文で書かれており、結構辛辣なことが多い(ただし妹は除く)。入学式会場の場所が分からないという女子に「場所くらい確認しておけよ」と心の中で毒づき(ただし口には出さない)、初対面の女子を「アピールが苦手な女の子」と評価する(当たっている)。

……ふむ、辛辣というのは言い過ぎたかもしれない。割と人間味に溢れているという印象を受けた。それでも人よりかなり冷めていて、物事を外から眺めているような感覚は否めないが、まぁ、結局は人それぞれの感じ方の差だろう。

「妹の存在」は可愛いだけでなく、物語において大きな鍵を握ってくる。なにせ主人公はシスコンであり、妹もブラコン。兄妹だと知らなければ、だのカップルにしか見えない。

基本的に冷めた主人公も妹のためならば何でもする。妹が基準で行動が組み立てられているのだ。

……だからこそ、読んでいてかなり「人間味があるようで、かなり冷めている」という奇妙な感覚を抱いたのだろう。妹がいなければ、もっと明るい主人公だったのでは? と思う。

今後広がっていくだろう設定の作り込みがどこまで広がっていくのか、期待せずにはいられない。読み進めていると「ラノベ読んでるなぁ」という感じがして、とても楽しい作品でした。

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