※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
魔法を使えるものと、そうでないもの。
情報
作者:佐島勤
イラスト:石田可奈
ざっくりあらすじ
魔法に関して一科と二科に分けられる学園にて、怪しい動きがちらつく最中、「二科と一科の差別をなくせ」という運動が起こり……。
感想などなど
今回は<下>ということで、上巻で何やかんやあった入学式にサークル勧誘でのいざこざ。読んでいる限り伏線張りと世界観説明色が強い内容でした。それに散々「最強キャラ」として名高い「お兄様」の強キャラ感が薄すぎるのも、いささか不可解に感じていました。
そんな疑惑や伏線が少しずつ丁寧に拾っていく下巻の感想を書いていきましょう。
剣道部同士の騒動を覚えていますでしょうか? 魔法を使う剣道部と、魔法を使わない剣道部の人間が互いに打ち合いして、怪我人が出た騒動です。その際、司波達也が仲裁に入り、魔法を使おうとしていた相手をまるで ”魔法を使えなく” しているかのようにしていました。
その解説が最初にされていきます。はっきり言って何が何だかといった感じで、ここで説明を書くには少しばかり難解が過ぎるというのが、正直な所です。しかし、ここでの設定が終盤で生きてくるのが憎たらしい。
簡単に言うと「変な電波を出して妨害してますよ」といった感じでしょうか。まぁ、読んで確認して下さい。たっぷりと5~6ページほど割いてくれています。
とにかく「何か凄いことしてる」という理解で全部何とかなる気がします……。頭が悪くて、ごめんなさい。
しかし、物語の主題は作り込まれた設定だけではありません。度々『一科生』と『二科生』との対比が登場します。タイトルも『魔法科高校の劣等生』ですし、『二科生』の兄と『一科生』の妹などが分かりやすいでしょう。
今回、学園を襲う事件の正体も、なくなることはないだろう ”できる者” と ”できない者” の間の差別意識が生み出したものでした。
厄介なのは差別される側の ”できない者” は力的にとても弱く、 ”できる者” は圧倒的に強い……という点でしょうか。もし戦うような状況になった場合、どちらが勝つのかは誰でも分かることです。例え戦闘だろうと、頭脳戦だろうと、情報戦だろうと、その差を埋めることは難しいはずです。
もう一つ厄介なことを上げるとすれば、「法律による差別はない」ことでしょうか。歴史上で度々登場する差別問題は、政治的に「〇〇は△△できない」などの法律が立てられます。今回の ”できる者” と ”できない者” における法律的に差別されている訳ではないのです。つまり、明確に攻めるべき相手がいない。
あるのは ”できる者” から ”できない者” に対する見下しと、”できない者” から ”できる者” に対して抱く劣等感。誰もが抱く可能性のある感情が引き起こす一騒動は、想像以上に大きなものとなっていきます。
魔法とはどうやら才能による差が大きいようです。分かりやすいのは、生まれながらにして魔力線(?)を見ることができる美月さんの存在(才能というより病気のようですが)だったり、元々使えないという人もいることからも分かって貰えると思います。
劣等生とされる司波達也も筆記で満点を取るほどの努力をしていながら、実技はからっきし駄目。一方の美雪との差は歴然。才能というものは素晴らしいものであり、恐ろしいものでもあるのでした。
……ここまで長々と語って参りましたが、まだ司波達也が最強という感じがしません。まだ力をセーブしているような。まぁ、自分の感性がおかしいのかも知れませんが、皆さんはどうなのでしょう。読んだ人には是非教えて欲しいです。