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魔王学院の不適合者4〈上〉 感想

【前:第三巻】【第一巻】【次:第四下巻
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※ネタバレをしないように書いています。

殺したぐらいで、俺が死ぬとでも思ったか

情報

作者:秋

イラスト:しずまよしのり

ざっくりあらすじ

魔王と勇者が共闘する、被害が広がる前に戦争を終わらせた。そして本当の魔王として、魔族を統治する……ことになるはずだったのだが。

感想などなど

第三巻にて勇者と魔王が共闘する展開は熱いものがありました。魔王に対して膨らみ続ける憎悪や恐怖、それにより得た絶大な力。力は拮抗しているかのように見えたのですが、魔王はやっぱり魔王でした。

そんな魔王の力もさることながら、七つの根源を持ち、そうとうな剣の腕前である勇者のことも忘れてはいけません。レイの正体がまさかの勇者だったという展開も大きな見どころの一つでした。

さて、そうして奇麗に終わったかに見えた第三巻。これがシリーズのラストだと言われても違和感はないように思います。しかし、魔王学院における不適合者の活躍はまだまだ続きます。

戦争が終わったとはいえ、人間側の民衆は闇を恐れているという事実には変わりなく、魔族側でも、これまで信じていた魔王が嘘であったという話を、「はい、そうですね」と受け入れられる人物はそう多くありません。とくに純血を守り続けたことで権力を得て、猛威をふるい続けていた皇族にとっては、何が何でも信じたくない事実だったことでしょう。

この一連の騒動が、何事もなく収束することなどありえないのです。

 

第四巻は長い長い物語の上巻、つまりは前編です。そういった作品の感想を書くのは、いつも難儀させられるのですが、この作品も例外ではありません。

この第四巻での流れを超ざっくりとまとめると、『神がやって来て。アノスを滅ぼす神の子が直に生まれると告げる』『神の子は誰なのか探す』『精霊王に会う必要に迫られる』『精霊王に会う』という感じです。

いわば事件が発生して、その手掛かりを求めて行動して、やっとのことで手掛かりを見つけた……という場面で終了です。まぁ、そこまでの過程として、魔王の配下であるミーシャやサーシャがとんでもなく強くなっていたり、レイとミサのカップルがとんでもなく愛を深めていることなど語りたい、突っ込みたい点は山ほどあるのです。

本作の魅力は魔王の絶対的な力という安心感の他、そういった配下たちの成長にもあるように感じます。勇者としての力、正体を隠す必要がなくなったレイの変わりようは目を見張るものがあります。ミーシャとサーシャは第一巻の険悪ムードが嘘のように仲良しで、実験材料にされ続け、あらゆることに対する諦観が滲み出ていたエレオノールが、怒りをあらわにするシーンなどは心に来るものがあります。

第四巻はそういったシーンを楽しむことになるでしょう。

 

しかしシーンを楽しんでいてストーリーの理解を疎かにしていては意味がありません。第五巻を読み進めるときになって、「は? 誰やこいつ」となっても困ります。新キャラはたくさんでてきてしまっているのですから。

神話の時代から存在していた人物としては、大妖精レノが一番印象的でしょうか。とはいっても彼女が関わってくるのは最後の最後。ある意味、ネタバレみたいなものですから悩ましいところです。

次いでアノスに付く勢力を持っていたとされる四邪王族。名前の通り、四人のめっちゃ強い魔族の総称です。実力はかなりのもの……まぁ、魔王には遠く及ばないわけですが。個性的でぶっとんだ面々は自然と覚えてしまうことでしょう。かませ臭はぬぐえませんが、魔王以外全員かませ、みたいな作品ですから仕方ありません。

読み進めていくと、魔王は魔力だけでなく頭も良いんだよ、ということを示したいのだろうシーンが多数出てきます。なんというか、結局魔法によるごり押しやないかい! と思わず突っ込みしてしまうことも多々あるでしょうが、気にしたら負けです。

魔王こそがルールなのだなぁ……と考えさせられた第四巻でした。このグチャグチャを楽しみましょう。

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