※ネタバレをしないように書いています。
殺したぐらいで、俺が死ぬとでも思ったか
情報
作者:秋
イラスト:しずまよしのり
試し読み:魔王学院の不適合者 7 〜史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う〜
ざっくりあらすじ
不滅の存在となった天蓋は、やがて震雨となって地底世界に降り注ぐことが運命付けられてしまった。それを防ぐために、予言者ディードリッヒが治める騎士の国・アガハへと向かった。
感想などなど
神アルカナの「兄が欲しい」という願いを叶えつつ、崩壊しようとしていた天蓋を、不滅の存在に変えることで救ったアノス。全てを救い、地下も地上も分け隔てなく平和をもたらそうという強欲さが、誰もが納得のハッピーエンドを生み出した。
しかし、不滅の存在となった天蓋ではあるが、それが逆に別の問題をもたらしたようだ。
その鍵を握っているのが、ディードリッヒという予言者であった。
彼にとって、この一連の結末も見えていた預言通りの展開であり、その結果、不滅となった天蓋が地上に降り注ぐという結末までも知っていたのだ。ここでポイントなのが、ディードリッヒにとって最善の未来だったということだ。
未来を知り、それに応じて自身の行動を変えることができるディードリッヒ。天蓋が不滅の存在にされてしまうことを嫌うならば、教皇ゴルロアナの行動を止めることだってできるはずだ。アノスが地下世界にやって来ることを、防ぐ手立てだってあったと思われる。
しかし、彼はそれらの選択肢は取らず、アノス達が天蓋を不滅に変える未来を選んだ。
この先の未来に、希望があるということなのだろうか?
ディードリッヒの表情は優れない。アノスは選定審判を終わらせるために、今色々と行動している。一方、ディードリッヒはそれを止めて欲しいとアノスに懇願する。
選定審判を終わらせた未来は、預言によると真っ暗な世界が広がっているのだという。
その未来を避けたいが、彼はどんなに未来が読めてもアノスには勝てないということが分かっていた。事実、彼に預言を授ける神ナフタとアノスが戦った際には、アノスが勝利を治めた。
例え、アノスの次の行動が分かっていたとしても。アノスに攻撃を当てることができたとしても。根源が潰されても復活し、肉体を貫かれても死なない相手に、勝つことはでいないという絶対の法則があるのやもしれぬ。
そんな彼ならば、ディードリッヒが絶対に避けなければならないとしていた絶望の未来も、もしかしたら……そんな希望が垣間見え、アノスなら何とかしてくれるかもしれないという安心感が漂う。
そしてアノスは本当に何とかしてくれるのだ。
未来を予言する敵というのは、他の作品だとかなりの強キャラとして描かれるだろう。魔王学院の不適合者の世界でも、そこそこに強い方だと思われる。だが、アノスにとっては、未来を読まれる程度では苦戦すらしない。
絶望の未来を、魔王の力でねじ伏せる。そんなハッピーエンド製造機が、アノス・ヴォルディゴードという男の真価なのではないだろうか。
読み応えのあるハッピーエンドであった。