※ネタバレをしないように書いています。
家族・友達
情報
作者:小川麻衣子
出版:小学館
試し読み:魚の見る夢 1巻
ざっくりあらすじ
母が死に、父は仕事に没頭して家に帰ってこなくなり、二人で暮らすことになった姉妹の日常。
感想などなど
この作品で描かれる周防家は、母親が死んでしまい、画家である父は画廊に籠もりきりになり、残された姉妹は二人きりで生活していた。
そんな姉妹の日常。第一話は姉・巴が妹・御影に外すことができない首輪をつけられ、そのまま誘導されるような形で学校に行ってしまう……という歪んでいるとしか表現できない様子が描かれる。
「いつからこんな関係になってしまったんだ」という巴の疑問に答えてくれるものはいない。だが「巴がなにを考えているのか分からない」という疑問には、御影ははっきりと答えてくれた。
「巴は私のことだけ考えてればいい」
「巴はずっとずっと私のもの」
と。
御影ははっきりと自分の思いというものを語ってくれる。第二話、墓参りをした後、水族館に向かった際、大きな水槽の前で、
「好き」
「大好きだよ」
「巴……」
と。
彼女の語る「好き」は、家族愛的な「好き」とは違うような気がする。
家族の形は家族の数だけあるものだ。だったら姉に首輪をつけたとしても、父親が戻ってこなかろうとも、母親が死んでいようとも、それは人湯の家族の形として受け入れるべきなのだろうか?
言葉では拒絶しながらも、どこか身体的には拒絶しきれない巴。二人の関係はどこかズレているように感じる。
第三話では百合カップルが登場する。有能で真面目な生徒会長をしている女の子と、ボーイッシュでちょっとやんちゃな女の子は、全校朝会を抜け出して校舎の裏でキスをしていた。
それを見ていた女の子二人、御影と高槻。
カップルとは違って、二人の関係はただの友達。
高槻はそのことをちゃんと理解して、それ以上の関係に進むということは、きっとこれから先もないと、何となく思っている。けれど、御影と巴が仲良くしている光景を見て、嫉妬という感情を抱くことくらい許されてもいい。
きっと。ただ辛いだけな気もするが。
第四話では生徒会長の名前が藤宮で、ボーイッシュな女の子は黒川という名前であることが明かされ、実は黒川と巴の仲が良かったということまで判明していく。世間というものは狭いなのだ。
それが決定的に御影が黒川を嫌う理由となった。殺しかねない剣幕で黒川を睨む。
それでもめげないのが黒川であった。妹と仲良くできないなら姉と、ということで急遽、黒川と巴が放課後に遊ぶことになり、そこに巴が乱入し……あぁあぁ、嫉妬が嫉妬を産んで嫉妬で滅茶苦茶だぁ……。
その渦中にいる巴が最も涼しい顔をしているのが面白い。
第五話では浴衣に身を包んだ美人姉妹、御影と巴が夏祭りへと赴く。そこで語られるは家族の過去であった。娘である御影に妻の姿を重ねてしまった父親。そんな父から逃げ出す御影。逃げ出した彼女を一番最初に見つけ出した巴。
……二人の時は、そんな過去のまま止まっている。
前に進むためには、大人になるためには、そんな全ての過去を払ってしまわなければいけない。
だが、自分にはそんな方法分からない。二人は見つけることができるのだろうか?
これはそういう話だと思う。