工大生のメモ帳

読書感想その他もろもろ

黒の召喚士4 無垢なる氷姫 感想

【前:第三巻】【第一巻】【次:第五巻

※ネタバレをしないように書いています。

バトルジャンキー召喚士

情報

作者:迷井豆腐

イラスト:黒銀

試し読み:黒の召喚士 4 無垢なる氷姫

ざっくりあらすじ

エルフの里防衛任務を達成したことで、S級冒険者へと無事に上がることとなったケルヴィン。それに当たり、盛大な式典が催され、S級の冒険者・シルヴィアとの模擬戦が行われることに。戦闘狂にとって垂涎ものだが――。

感想などなど

ケルヴィンよりも先に転生してきて、魅了のスキルで籠絡した美女をそばに置いて好き放題にしていたクライヴとの戦闘は、かなり白熱したものとなっていた。結果としてケルヴィンの完勝。

敗者は国に連れて行かれ、これまで好き放題にしていた女性達に殺されたと思われる。魅了スキルで自分のものにした女性に、奴が何をしたのかは考えないようにしておこう。

しかし、日本人達が転生して力を得て何をするのか……と考えた時、クライヴのような者もそれほど少なくないのだろう。勇者としてヒーローごっこに興じていた高校生達は可愛いものだった。戦闘狂で強者と戦うことを何よりも望むケルヴィンもまた、可愛いものである。

そんなケルヴィンにとって、強者と戦っているだけで勝手に周囲の評価が上がっていくこの世界は、前世よりも遙かに居心地が良いのではないだろうか。ハーレムだし。まぁ、彼には前世の記憶がないのでなんともいえないが。

この世界でケルヴィンの妹となったリオンは、前世で幼い頃から病に伏して、早い内に亡くなった。楽しみはベットの中でもできるゲームや読書だったことは、彼女の語り口から分かる。レベルやスキルという概念は受け入れやすく、事実、かなり効率良く強くなっていくこの世界は、彼女にとって求めていたものなのかもしれない。

とにかく、ケルヴィンやリオンが幸せそうで何より。

 

エルフの里防衛により、S級冒険者となるケルヴィン。S級というのは、これまで名前だけ登場し、冒険者の姿は出てこなかったが、この第四巻でケルヴィン含めて三人も登場する。

一人目はゴルディアーナ。二つ名は『桃鬼』。

彼の外見を上から列挙していくと、リボンで結われた巨大なツインドリル、毛ボーボーな筋骨隆々な胸、可愛らしいフリル付きのメイド服、ぶっとい筋張った足……という近頃アニメでもお目にかかれないオカマである。口調もオタクが想像するオカマの言動を当てはめていけばゴルディアーナが完成となる。

二人目はシルヴィア。二つ名は『氷姫』。

彼女はすらりとした細身の女性魔法剣士で、生活能力に少しばかり難があるような雰囲気のする高貴っぽい人である。ケルヴィンに喧嘩をふっかけようとする仲間を嗜めようとしたり、ケルヴィンの「本気で戦って欲しい」という言葉に真摯に応えたりと、かなり真面目で大人しめな女の子という印象を受けた。

しかし戦闘においては冷徹で冷酷。ケルヴィンのS級の昇格を祝う式典において企画されたS級同士の模擬戦において、彼の相手は彼女となった。特別な魔法結界により、死んだとしても生き返る舞台とはいえ、彼女はガチでケルヴィンを殺そうとした。

ケルヴィン以外であれば1秒と持たない猛襲。並の冒険者であれば100回死んでいる戦闘が繰り広げられる。勝ったとしても何の報酬もなく、ケルヴィンに何も言われなければ適当にやり過ごそうとしていたシルヴィアの本気を見ることができる。

それを楽しそうに受けるケルヴィンは、やはり戦闘狂と言わざるを得ない。

 

この第四巻の見所はその戦闘だが、ストーリーとしては大きく動きだそうとしていた。これまで漠然としか描かれてこなかった裏でうごめく巨悪が、表だって動き始めたのがこの第四巻である。

表だって、とは言うもののその正体は明るみにされていない。ただ裏で推し進めていた計画が芽吹き、ケルヴィン達も巻き込まれざるを得なくなったという説明が適切か。

具体的には軍国トライセンの周辺国家への宣戦布告、からの戦争の勃発である。

その引き金となったのが、エルフの里襲撃に加担していたクライヴの行方不明(まぁ、彼の所属していた軍国トライセンが自ら始末したんですけどね)であり、その原因は獣王にあるとして宣戦布告した訳だ。

軍国としては、女を与えておけば戦ってくれるクライヴも、立派な戦力として数えていたようだが、負けたなら仕方なし。戦争をふっかける理由くらいには利用してやるか、くらいの軽いノリなのかもしれない。

ただ彼らにはまだ隠し球の戦力があるらしい。これからケルヴィンが忙しくなりような予感をヒシヒシと感じつつ、第五巻への期待も膨らむというものだ。

【前:第三巻】【第一巻】【次:第五巻