※ネタバレをしないように書いています。
バトルジャンキー召喚士
情報
作者:迷井豆腐
イラスト:黒銀
試し読み:黒の召喚士 7 蠢く闇
ざっくりあらすじ
獣王祭の決勝トーナメントも順調に進行し、ケルヴィンは獣王レオンハルト・ガウンとの対戦が決まる。互いに一歩も譲らない切り札の出し合いの行方はいかに――。
感想などなど
獣王祭……ガウンで行われる武闘トーナメントのことを指す。
そのトーナメントには各地から強者達が集い、運営側が用意した武器と、一つだけ付与効果のある装備品を身につけて戦う。名前を冠する獣王も参加し、互いに全力で戦う最強を決める舞台。
ちなみに前年の優勝者は、決勝で獣王と戦い勝利したS級冒険者『桃鬼』ゴルディアーナ・プリティアーナで、今年も参戦している。当然ながらトーナメントは順調に勝ち進み、彼女は『女帝』セラと戦うことになっている。
このゴルディアーナとセラの戦闘も見所となっている。セラは固有魔法『血染』(血に触れた対象を絶対服従させる)を応用した戦術など、かなり頭を使った戦い方をしつつ、それを迎え撃つ前年優勝者ゴルディアーナは、力業でそれらをねじ伏せていく。『桃鬼』と言われるゆえんとなったゴルディアーナの切り札は、二人の戦いを大いに盛り上げる。
ただ一番盛り上がるのは、やはり主人公ケルヴィンの戦いであろう。
その中でもケルヴィンが思わず笑みを浮かべてしまうような強敵との戦いが好ましい。その強敵と呼ぶに相応しい相手こそ、獣王祭の主催であり最強の獣人レオンハルト・ガウンだろう。
主催であるが、彼もまたトーナメントに名を連ねて戦う参加者の一人。それまでの戦いは、観客からブーイングを受けるような搦め手ばかりだった。たとえばケルヴィン邸の見習いメイド・リュカと当たった時、レオンハルトはトライセンの姫シュトラの姿で舞台に上がった。
レオンハルトは本当の姿を家族ですら知らないというほどに、常に変装して過ごしている。その変装技術はかなりのもので、ステータスまである程度模倣できるというのだから驚きだ。
まだ幼いメイド・リュカにとって、姫君シュトラを攻撃して傷つけることなどできるはずもなく敗北。その戦いとも呼べない一方的な戦いに、観客席から大ブーイングが上がったことは言うまでもない。
しかしレオンハルトは気にしない。
いよいよケルヴィンとレオンハルトが戦うという時になると、ケルヴィンとの付き合いが最も長いハイエルフ・エフィルの姿で現れた。武器を持っていない、私は戦う意思がないといった装いで向かってくる。先ほどのメイド・リュカとの戦闘を想起させるような流れに、ケルヴィンはどう立ち向かうのか?
ここでいよいよレオンハルトの本気が見られる。手に汗握る戦いであった。
前半はそんなトーナメント戦が進んでいき、後半はその裏で画策していた者達が行動を開始――ケルヴィンの首を取りに来たり、トーナメント会場がボコボコにされたりといった急展開を見せる。
しかも……ネタバレをしないために詳細は省くが、予想外の裏切り者も判明する。ブログ主的にも驚きであったが、それ以上に「あなたそんなに強かったの⁉」という驚きの方が強かったかもしれない。
なにせケルヴィンは一度死ぬことになる。
忘れていたが、ケルヴィンは一回目は死んでも復活するというスキルがあった。それを使わなければならない状況に追い込まれたという訳だ。もしもこのスキルがなければ、「誰に殺されたのか」「なぜ殺されたのか」何の謎も明かされぬまま完という結末を迎えるところだった。
その裏切り者に対するケルヴィンの対処の仕方が、らしいというべきか、ハーレム製造機とでも呼ぶべきか……。そして次々に明かされる敵の目的と計画。魔王の復活に関わっているのではという予感はあったが、ケルヴィン達に迅速に討伐されたことがむしろ敵にとって優位に働いていたことや、ケルヴィンレベルの強さを誇る敵がまだまだいるかもしれないという情報が明らかにされていく。
……ケルヴィンがどこか武者震いしつつ嬉しそうなのは気のせいではないので、これからも戦闘狂としての戦いの日々は続いていくことだろう。戦闘が目白押しの第七巻であった。