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【漫画】黒猫と魔女の教室1 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

魔法使いになりたい!

情報

作者:金田陽介

試し読み:黒猫と魔女の教室 (1)

ざっくりあらすじ

魔法が使えない魔女見習いスピカ・ウェルゴは、独学で練習するも上手くいかない日々を過ごしていた。そんな中、言葉をしゃべる自称元魔術師の黒猫と出会う。彼を師匠と仰ぎ、魔法学校の最難関・王立ディアナ校への入学という目標のため、頑張り始めるが……

感想などなど

本作には何らかの理由で黒猫にされた魔術師が登場する。黒猫の姿となってしまってから、彼の言葉が聞こえるのはスピカ・ウェルゴただ一人。誰かに頼ろうもにその手段がないという状況だ。また独自に解呪できる方法を調べようにも、猫の姿では難儀する。

そんな黒猫の姿を元に戻すために奮闘する。まぁ、元に戻るのはもう少し後かな。十巻くらいは覚悟しておこ……ではない。黒猫が元の姿に戻るというクライマックスは、この第一巻の第一話で成し遂げられる。

前作「寄宿学校のジュリエット」において、ヒロインへの告白が第一話で行われたことを思い出された。古典文学では結末に持ってこられるような、このままエンドロールが流れても違和感ないシーンが第一話で描かれる。

人ではない獣の姿になった者を元に戻すのは、決まって接吻である。

そんなお約束のシーンが外れになるはずなどない……と思っていた。ヒロインとヒーローの接吻は、ストーリーを盛り上げる。この作品における接吻も、ある意味で大きな諸上がりであり、「主人公の覚悟」を確かめるという重要な要素となっている。

しかし……それにしたって酷い接吻シーンだった。どう酷いかは読んで確認して欲しい。

 

酷い接吻シーンを乗り越えて、黒猫はクロードに戻りハッピーエンド。二人は幸せな生活を送りました、で終わるようでは連載にならない。黒猫から元の天才魔術師クロード・シリウスの姿に戻ったが、それはあくまで一時的。

どうやら接吻をするスピカの実力が足りなすぎるせいで、呪いを一時的に退けることしかできないようだ。時間が経てば黒猫に戻るし、そこから元に戻るには、再び酷い接吻シーンを見る必要がある。

これが毎朝の恒例行事になると思うと、なんとも酷い目覚めになりそうだ。

そこで一級魔術師になりたいというスピカの夢と、元の姿に戻りたいというクロードの目的が一致した。スピカを強くするためにクロードが指導し、スピカがそれに答える。その第一段階として、魔法学校の最難関・王立ディアナ校の試験合格に向けて頑張ることに。

つまり修行編が始まる。

修行編は退屈というのが共通認識としてあるかもしれないが、本作は異様にテンポが良い。修行という名の畑作業から始まり、試験開始までが一話に収まっている。修行の中には、魔法に関する設定の説明――例えば黄道十二星座に基づいた魔法の概念、生まれ持った星座の魔法以外は使えない、等々――重要な内容がさっくり明かされていく。

スピカの場合、乙女座なので『植物操作魔法』しか使えない。

この “しか” というところが意外と重要だ。第一話の冒頭にて、ホウキにまたがって必死に空飛ぶ練習をしていたスピカの努力は、まるっきり無駄だったということだ。そして、自称天才(おそらく実際に天才)スピカの幼なじみアリアは水瓶座で水操作の魔法しか使えない。

魔法とキャラクターの個性が紐付いており、それが戦い方に色濃く反映される。

スピカは植物を生長させてツタをムチのようにして攻撃したり、相手を捕縛する搦め手の戦術。まだ植物を一気に成長させて使役するだけしか使えないが、それでも汎用性があり強い。

第一巻を通して、魔法は一つしか習得していないにも関わらず、植物の種子を持ち歩くといった対策を打ち出し、効果的に利用しているのも評価ポイントが高い。可愛いし、ブログ主ならば合格の印を押しちゃう。可愛いし。

 

この第一巻だけで『ヒーローとの出会い』『最終目標の確定』『学校入学』までを果たし、クラスメイトの説明までハイスピードで展開した第一巻。今後重要になりそうな伏線もチラホラ見受けられ、前作『寄宿学校のジュリエット』のギャグが好きならばそのノリは健在である。

期待しかない第一巻であった。

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