※ネタバレをしないように書いています。
魔法使いになりたい!
情報
作者:金田陽介
試し読み:黒猫と魔女の教室(8)
ざっくりあらすじ
南国の無人島で、そこに隠された宝石を見つけ出すという試験で、ルビーを取って50ポイント獲得するも、ライバルであるアリアは90ポイントとその差は歴然。残された最後の宝石、ダイヤモンドを取って逆転を狙う。
感想などなど
夢はある種の呪いだと思う。
夢のためならば人はどこまでも残酷に努力を続けられる。それは成功すれば美徳となるが、失敗すれば周りから見えなくなる。我々は成功者の物語にしか興味を持たず、失敗した者の話を知ろうとしない。
いや、知っているが意図的に無視している。
夢という甘い言葉で包み込めば、その過程で周りを不幸にしても許されるという風潮がある。「夢を叶えるためならば」という大義名分が蔓延っている。
第七巻、期末試験が始める前。スピカはクロードに憧れて一等級魔法使いになりたいという夢を語っていた。その言葉を聞いたアリアは大爆笑。才能もない彼女の言葉を本気とは捉えなかったのかもしれないし、ギャグと受け取ったのかもしれない。そんなアリアの反応に対し、スピカも黙っていない。言い合いとなって、売り言葉に買い言葉のこの状況を収めたのは、アリアの次の一言だった。
は?
夢あるのがそんなに偉いわけ?
別にスピカは「夢があることが偉い」と主張した訳ではない。夢を持っていることをバカにされたから、そんなことを言うなと反論したに過ぎない。そこまでキレるほどのことではないはずなのに、アリアの表情は冗談ではない怒りが垣間見えた。
アリアが抱えている過去と、天才アリアに真っ向勝負を挑むスピカ、二人の物語の感想を語っていきたい。
第七巻では無人島に隠された宝石争奪戦が始まり、仲良く歌を歌ったり、イルカを焼いたりと、スロースタートを決めたスピカだったが、鎧ハゲワシという巨大鳥が咥えていたルビー(=50ポイント)争奪戦を制したことで期末試験落第を阻止した。
しかし、目標である一位にはまだ遠い。
現在の一位はスピカの幼馴染みにして、クロードも認める天才・アリア。彼女の強さも第七巻で改めて描かれており、実力的にはトップレベルのボルックスとアリアの戦いは、海に誘い込まれたボルックスが特大魔法でごり押しされて潰されることで決着がついた。
知っていたことではあるが、アリアは強い。
そんなアリアに期末試験で勝つためには、まだ誰も見つけていないダイヤモンド(=100ポイント)を見つけ出すしかない。そのヒントはマップにあるということで、それぞれが思い思いの場所を探し始めた。
そんな中、スピカは持ち前の柔軟な発想によって、マップの秘密を解き明かし、誰よりも先にダイヤを見つけ出す! ……ここまでは良かった。ダイヤモンドを目前にしたスピカの前に現れたのは、まさかのアリアだった。
一位になるためにはアリアとの一騎打ちで勝つしかなくなった。
大技の撃ち合い、力のゴリ押し、鬩ぎ合いとなればスピカには勝ち目が無い。そうなってくると、これまでのスピカの戦い方である搦め手、騙し討ち、不意打ちを駆使して確実に一発で仕留めるしかない。
このアリアとの戦いが第八巻における見所となっている。圧倒的な力を押しつけられて、それに対抗するスピカの咄嗟の機転が炸裂し、互いに一時も気の抜けない戦いが続いていく。
この二人の決着を決めたのは、それぞれの生き様だったように思う。スピカがこれまで島で過ごしていた無駄とも思えた行動も、優しさ故にした行動も、その全てに意味があったのだと分かる。
期末試験終了後は、無人島でのバカンス回である。海で泳ぎ、豊かな自然による食材に舌鼓を打ち、アリアの過去――夢を憎むに至った父親との関係性が語られ、これまでアリアとスピカの間にあった妙な軋轢が消えていく。
メタ的なことを言ってしまうと、アリアは悪堕ちすると第一巻を読んだときからずっと思っていた。妙にスピカに突っかかるアリアの姿勢や言動から、嫉妬らしき感情を感じ取ったのは気のせいではないと思う。ただ揶揄って楽しむだけではない何かがあると思っていた。
その感情が爆発してしまえば、コロリと敵側に寝返ってしまうような不安定さを彼女に感じていた。そのような偏見は、彼女のことを知らないからこそ抱いてしまったものだったと思う。
これまでベールに包まれていたアリアの心を知ることができただけでも第八巻は大収穫だったといえる。さらにこの第八巻ではスピカとクロードのドキドキ(?)デートが描かれることにもなる。
ケツ穴にキスする度にリセットされるみたいに忘れていたが、スピカはクロードに憧れていたのだ。下手なカップルでもできない特殊なことをしている関係性の二人は、ここから進展することはあるのだろうか。
これから先が気になる第八巻であった。
