工大生のメモ帳

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冬のとある一人鍋

今週のお題「鍋」

大学生の頃、何度か鍋をやったことがある。鍋はその時の気分で適当に買ってきた鍋の素を突っ込んで、中身もこれまた適当で、しかし闇鍋をやる勇気はなく、無難な鍋を皆でつついた。

正直、どんな鍋を食べたか、味すらも記憶にない。なぜならメインは酒であったからだ。アルコールで酔った状態で、皆で見るスポーツや映画、アニメを鑑賞する時間は……やっぱり酔ってて記憶にないが、楽しかったんだと思う。次の日、頭を抱えつつ掃除している時間まで含め、大学生だからこそできたことだったんだと、社会人になった今は思うのだ。

そんな中、唯一鍋の味を覚えている鍋がある。それは一人で鍋を作り、一人ですべてを平らげた一人鍋というやつだ。

あれはとてつもなく寒い冬であった。講義を終えて一人寂しく帰る道すがら、よったスーパーに大量に並べられた鍋の素の中で、不人気なのか知らないが特価価格でありながら大量に残っていたのがキムチ鍋の素だった。安さは大学生の味方である。キムチ鍋の素を買う手に迷いはなかった。

となると次は鍋の中に入れる具材というものを買わなければならない。ここでも可能な限り特価品を買いたいと動くのは、できる主婦と大学生くらいなものだろう。買い物かごには豆腐とエビ、白菜が突っ込まれた。

そして家に帰り、ただ一人鍋を作ろうとして苦労することなど気づくはずもない。

 

……。

 

鍋をするには、当たり前だが鍋が必要である。「鍋がなかった!」ということはなく、鍋はすでに買ってあった。しかし四人でつつきには丁度いい鍋も、一人には大きすぎる。ここで少しばかり「なんで一人で鍋をしようとしたんだろう……」と後悔することになるが、まぁ、それはいい。

次に材料の下ごしらえをする。いつもは肉だが、今日はエビ。このエビというのが厄介な敵であった。なんと男子大学生はエビの下ごしらえの仕方を知らなかったのだ。ネットで検索し、「背ワタ……? 背ワタってなんだ? 背骨か?」と悪戦苦闘し、時間だけが刻々と過ぎていき、気づけば炊いておいたお米が炊けていた。「なんでエビを買ったんだ」と思わず独り言が零れるのも自然というものだろう。

キムチ鍋の素の裏に書かれた指示に従い鍋を作り、出来上がった鍋を食らった。そして知る、キムチ鍋というのは結構辛いということを。そして自分は予想以上に辛さに弱いということを。鍋の素はものによっては量の調整が難しく、二人分を一人で食べることになるということを。

鍋の素がもったいないという理由で、必死に辛いキムチ鍋を食べつくし、流した涙は辛さが目に染みたからだと信じている。

 

……。

 

これはただの思い出話。オチを求めるのは酷である。

ただ先人の知恵として一人鍋はお勧めしない。鍋は大勢で囲むに限る。