※ネタバレをしないように書いてます。
納得の第23回電撃文庫大賞受賞作
情報
作者:安里アサト
イラスト:しらび
ざっくりあらすじ
サンマグノリア共和国は隣国「帝国」の無人兵器 ”レギオン” による侵略を日々受けていた。それに対抗するために同型の兵器を開発を成功させ、犠牲者を出すことなく脅威を退けていた。
しかし、それは表向きの話であって、現実は違っていた。
”エイティシックス” の烙印を押された人々が機械に乗り込み、日々命を削り闘っていた。彼らは人ではない、として死者数にカウントされないのだという。
そんな戦場で戦う ”エイティシックス” のとある部隊の少年 シン と、聴覚の共有を行う特殊通信によって部隊を指揮する指揮官 レーナ。
立場もいる場所も何もかもが違う二人は、対話を通して、互いに理解を深めていった。
悲しき戦争と別れの物語の幕開け。
感想などなど
設定は非常に暗く、重たい。
舞台は血なまぐさい戦場で、相手は無尽蔵にやってくる無人兵器。一方こちらは普通の人間の――しかも子供達が大半である。それだけでもかなり重たいというのに、作戦を考える人間だけでなく、守られている街の人達までにも人間として扱われていないと来た。
そう、彼らタイトルにもなっている86達は人間として扱われていないのである。
だからこそ戦争での負傷者はどんなに86達が死のうとも、零として発表される。あまりにも辛い。
ここで一つ疑問に思うことがある。果たして86達には闘う意味があるのだろうかと。
自分たちが生きるため? 人として扱われず戦場に出続けたら遅かれ早かれいずれ死ぬことになる。そんなこと彼らだって分かっているはずなのだ。
それなのに、彼らは今日も戦い続ける。上層部の人間の指示に従いながら。
必死に戦場で戦う仲間達全員が生き残って欲しい、幸せになって欲しいと思いながらも、ページをめくる手は重くなっていく。
どんなに抗おうとしても敵は強大で、対して主人公のレーナにできることは安全な場所から指示することだけ。自分と同じ年代くらいの少年、少女達が悲鳴を上げて死んでいく。
それでも、世間には「犠牲者は誰も出なかった」と報道される。
誰も報われない。
救いはないのか、と問いただしたくなる。
もうダメだ、と誰もが音を上げる状況で、レーナはどんな選択をするのか。俺は泣いた。
レーナ率いる86の面々はとある任務へと送り出される。任務の内容は敵地への潜入。敵地へ行くと言うことは国からの支援だけでなく、通信も何もかもが断絶された中に突っ込んでいく。
……察していただけるだろうか。この任務。どんなに頑張ったところで死ぬのだ。
敵を全滅させでもしたら戻ってこれるだろうが、そんなのは夢のまた夢。天地がひっくり返ってもあり得ない。
最期の最期まで絶望に打ちひしがれながら、「あぁ、これで終わるのか」と思っていたら、最後でまたやられた。計二回泣いた。
設定も細かく練られていた。合間合間に挟まれるイラストも交えた解説がこれまた面白い。もちろん、それらを見なくてもストーリーの理解はできるが。
アニメ化希望。てか、絶対するだろ。もっと話題になれ。