※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
彼や彼女の選択は正しかったのか。
情報
作者:藻野多摩夫
イラスト:いぬまち
ざっくりあらすじ
クロとの長い旅を終えたエリスは燃え尽きたかのように、毎日空を眺めるだけの日々を送っていた。
そんなある日、空から宇宙船が不時着した。
そこから出てきたのは一人の自称地球の全権大使 メッセ
八十年ぶりに再開されるという地球と火星の交流のために、火星の首都であるエリシウムまで彼女を送り届けることになる。
メッセの「できる限り早く」という要望により、目的地に最短経路で向かうため、過去の戦争により汚染されて有毒ガスの漂う死の渓谷 ”ルクス・グラーベン” を二人は進んでいく。
その先で二人は残酷な現実を目にすることになる。
感想などなど
一巻があまりにもきれいな完結だったので、続きを書くにしても主人公を変えるなりするかと思っていたのだが、主人公は変わらずエリスとなっている。一巻で壮絶な過去が語られて(実は少女じゃないなんて……)、最後は親しんだクロとの死別。
ここから物語が膨らむのだろうかと少し心配だったのだが……
そんなことはなく安定して面白かった。
一巻と同様に大事になってくるのは『 火星という特殊な環境で紡がれる壮大な歴史』 だ。
火星に移住した人々はそれぞれ何かしらの願望、希望を抱いてやって来た。
しかし待っていたのは悲惨な戦争だった。この戦争で勝つために、生き残るために人々は一体何をしてきたのか。元々人が移住できるようにするために頑張っているはずなのに。
しかも現状を見ていただきたい。一巻を読んでもらったならわかってもらえると思うが、控えめに言っても戦争が終わり復興が出来たとは言い難い。
その現実を無視することは誰にもできない。
元々は人が住めるように人々が移住してきた。ということは戦争が起こったといえど、何かしら開発が行われていたのではないか?
事実行われていた。火星に来た人の中にも技術者がいたのであって、その最先端の技術を駆使して火星のためを思い必死に働いている人々がいた。
この火星が復興できて、地球と同じように生活できるようになる未来を信じていた。その一歩として自分たちが頑張らなければいけないと奮闘していた。
今回はそんな彼らを背景に物語が進行していく。
前作クロの立ち位置がエリスに変わったようなものだ。大きく違うのはクロがとても優秀だったのに対して、メッセは……その、何というか……プライドが高くてちょっと残念な女子だ。
はっきり言ってしまえば、何もできない女だ。
そんな彼女の成長も、見所の一つとなっている。
SF的世界観と壮大な物語。三巻が楽しみ。