工大生のメモ帳

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戦略拠点32098 楽園 感想

※ネタバレをしないように書いています。

楽園とは何か?

情報

作者:長谷敏司

ざっくりとあらすじ

千年にも及ぶ星間戦争の最中で、敵が必死になって守る謎の惑星に降下したヴァロワは、敵のロボット兵ガダバルと少女マリアに出会う。

戦場に戻る宇宙船も、助けを呼ぶ術もなくしたヴァロワはそこで三人一緒に過ごすことになる。

感想などなど

SFのライトノベルでは最高傑作なのではないだろうか? と個人的には思う本作。

細部まで作り上げられた設定と、巧みな心情や風景の描写。壮大なスケールの物語。良い点を上げていけばきりがない。

では、いつも通りこの物語の焦点を考えていこうと思う。

さて、主人公は戦場で戦う兵士だ。しかし、ただの兵士ではない。自らの肉体に改造を重ねて、戦いに必要ではない感覚を消し去っている。脳以外は金属でできているという徹底ぶりだ。

つまり、

人に触れても、その温もりを感じることができない。

傷ついた時の痛みを知ることができない。

主人公が自ら選んだ道だ。後悔はなかった。そんな彼が少女との交流で思うこととは?

 

彼女や惑星の存在は謎に包まれている。前半部分では『敵が必死になって守ろうとしている』という情報しかなく、何を守ろうとしているのか分かっていなかった。おそらく何か重要な拠点か、大切な資源が存在するかするのだろうと思われていた。だからこそ主人公達(結局主人公しか生き残れなかったが)は星に向かって、その守っている何かを手に入れようとした。

そんな惑星にたった一人いた少女(強化兵ガダバルが来たときから一人だったらしい)。主人公は当然困惑する。軽く星を探索してみるも資源も武器も存在しない。そして戻ろうと思っても、飛空艇は壊れてそれすらも叶わない。

望まない内に戦場から外されたようなものだ。そこで何とか秘密を探り出せないか、戦場に戻れないか模索する。

しかし、あまりに楽観的で、戦争なんか知らないといった少女との日常が淡々と続いてく。それを通して忘れていたはずの過去の思い出や人のぬくもりが思い出されていく。しかしそんな日常を過ごしていくうちに、数多くの謎が徐々に解き明かされていく。

あまりに悲しく残酷な現実。そこが楽園と呼ばれる理由がそこにはあった。

戦争に明け暮れるこの宇宙において、楽園とは何なのか? 人が自分の命をかけても守りたいと思うものとは一体何なのか?

 

この作品に関しては絶対ネタバレをされないで見て欲しい。本当に傑作。ライトノベルという認識よりは、本格SFと思って読んでもらいたい。

戦略拠点32098 楽園 (角川スニーカー文庫)

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