工大生のメモ帳

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タタの魔法使い 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

幼い頃の夢を覚えていますか?

情報

作者:うーぱー

イラスト:佐藤ショウジ

ざっくりあらすじ

2015年7月22日12時20分弘橋高校1年A組の教室に異世界の魔法使いを名乗る謎の女性、タタが突如出現した。後に童話になぞらえ「ハメルンの笛吹事件」と呼ばれるようになった公立高校消失事件の発端である。

「私は、この学校にいる全ての人の願いを叶えることにしました」

それにより、全ての生徒の中学での卒業文集に書いた夢が実現。

犠牲者200人のサバイバルの幕開けであった。

感想などなど

電撃文庫大賞受賞作でありながら異世界転生物であるということで前々から気になっていた本作。やはり「小説家になろう」にはびこっている有象無象の異世界物とは一線を画すものとなっていた。

 

まず、この物語はドキュメント形式で語られている。どういうことかというと「ハルメンの笛吹事件」が終わった後に、生存者のインタビューによって綴られている。結末が分かっていて、その結末に至るまでの過程を淡々と書かれているわけだ。

登場人物はとても多い。何せ一つの学校の全生徒と全教師が異世界に飛ばされているのだ。数だけ言えば500人弱である。

それだけの人間が一度に異世界に送られるとどうなるか?

その答えは本編を読んで貰うとして、設定の緻密さと表現の仕方は分かりやすく、かつ面白く描かれている。ドキュメント形式ということで「読みにくいのではないか?」「分かりにくいのではないか?」と思っている人もいるかもしれませんが(自分はややこしくなりそうだと思ってた)、そんなことはなくスムーズに読めます。

 

さて、この物語では「将来の夢」が大事になってくる。

中学生のころの夢……それが全員叶った世界。つまり「ヒーローになりたい」と書いていればヒーローになっているわけであって、「モテモテになりたい」と書いていればモテモテになるわけである。

これがどう異世界でのサバイバルに繋がっていくのか?

異世界は「小説家になろう」で描かれている世界とそう大差はない。科学技術という物がなかったり、魔法をみんなが使っていたり、言葉が通じなかったり……etc……

そんな世界を文字通り生き残る、サバイバルしていくために重要になっていくのが、この叶えられた夢となるわけである。

「医者になりたい」という夢を持っていた子は病気や怪我を治療できる。

「魔法使いになりたい」という夢を持った子は魔法を使いこなすことができる。

一方……

「サラリーマンになりたい」と答えた子は? 「F1レーサーになりたい」と答えた子は? 「いじめがなくなって欲しい」と答えた子は?

はてさて、これらの設定がかみ合ってラスボスとの清最終決戦。

印象に残る納得の電撃文庫大賞受賞作。続編もあるそうですので、どのようになるのかが楽しみです。

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