※ネタバレをしないように書いています。
独特な世界観と文体の融合
情報
作者:田中ロミオ
イラスト:山崎透
ざっくりあらすじ
わたしたち人類が緩やかな衰退を迎えて、はや数世紀。すでに地球は妖精さんのものだったりします。
平均身長10センチ。
三頭身。
高い知能。
無邪気な性格。
失禁癖あり。
極めて敏捷……etc……
そんな妖精さん達と旧人類である私たちの関係性を取り持つ”調停官”となるために、世界最後の学舎、最後の卒業生として故郷のクスノキの里に帰ってきました。
そして、早速妖精さん達に挨拶に伺うのですが……
感想などなど
「さようですか」「すいませんなさい」「ちんしゃします」「かくごしなくてもよかった」「にんげんさんのちにくになります?」
妖精さんの台詞である。小さな妖精さんが小首を傾げ、わちゃわちゃしてる姿が想像できる。アニメ化もしているそうなので是非とも見てみたい。
文体はかなり独特です。自分は割りかし普通に読めたのですが、苦手な人は苦手かも知れません。
そして、世界観もかなり独特なものとなっている。無理矢理ジャンルに分けるとすればファンタジーなのだろうが、文体も相まって一つの「人類は衰退しました」というジャンルみたいになっている。
設定だけ見れば、人類の数が少なくなって代わりに妖精さん(新人類)が地球に住み着いている。かわいらしい名前だが侵略者と名前を変えてもどこかしっくりするのは自分だけだろうか。
どう見ても状況は人類にとって切羽詰まった危機的状況である。移動は馬車で、食料は配給でまかなわれ、電子機器はとうの昔に滅び廃れている。
しかし、そんな感じが一切しない。これは文体のせいである。おかげ、と言い換えてもいいかもしれない。
”わたし”は調停官という役職に就く。何をする職業なのかと言われれば、何もしない。
妖精さんが人を殺し回っているとか、不平等条約を結ばれて不利益を被るような貿易が行われているとか、そういうことは一切起きない。妖精さんはただ自分たちが”楽しむためだけに”自由気ままに生きていた。それをただ眺めて、巻き込まれていく”わたし”。あぁ、ある意味それが仕事なのだろうか。
まぁ、その楽しみ方は旧人類である我々には到底理解しにくいものであったりするわけだが、そこは本編を読んでのお楽しみというわけで。
その妖精さんのお遊びに巻き込まれていく”わたし”の物語。アニメ映えしそうだなというのが単純な感想です。サスペンス的展開だったり、予想外の結末といったものはありませんが、ゆったり気ままに読むにはぴったりの作品でした。