※ネタバレをしないように書いています。
夢を語る。終わりは何処。
情報
作者:支倉凍砂
イラスト:鍋島テツヒロ
ざっくりあらすじ
人々が新たな技術を求め、異教徒の地へ足を踏み入れようとしている時代。
錬金術師のクースラは研究の過程で、聖人の骨を教会から盗み出し、教会に背いた行動を取ったとして昔なじみの錬金術師ウェランドと共に、戦争の前線の街グルベッティの工房に送られることになる。
そこの前任の錬金術師は謎の死を遂げたのだという。
そんな話を聞きながら工房に向かってみると、フェネシスという白い修道女が二人を待ち受けていた。教会の命令で監視をするためにここに来たと言うが……
夢を目指して、その先の世界へ進むファンタジーの幕開け
感想などなど
本作は支倉凍砂さんが狼と香辛料の本編が完結して一年後に連載され始めた新シリーズ。とはいってももう完結していますが、今更読んだので感想まとめていきます。
前作は商人でしたが今回の主人公は錬金術師。錬金術師と聞いて、とあるガンガンで連載されていた漫画を思い浮かべたのは自分だけではないでしょう。それが有名になりすぎたためか、錬金術師と言えば戦闘という固定観念があると自分は思います。
しかし、この作品(まだ一巻しか読んでいないですが)戦闘はありません。
一巻で大きくページを割いて、錬金術とは何なのか? 錬金とは何をするものなのか? が描かれています。
ざっくり説明すると、何か物質を生み出す上での効率を追い求めて錬金術師は試行錯誤を繰り返しているのだという。
例えば鉄を作りたいと思ったとしよう。
その鉄を作りだすというのは、「鉱物から不純物を取り除いていき、鉄だけをきれいに取り出す」ということを意味します。
しかし、実際に全ての不純物を取り除いて純度100パーセントの鉄を作り出すことなど不可能。
その不可能を可能にするのが錬金術であり、そのために錬金術師は禁忌まで犯してしまう。
そう、教会に忍び込み聖人の骨を盗み出すこともしてしまうのだ。
なので作品を通してやっていることといえば、錬金術という名の鉄の錬成であって地味である。まぁ、それは狼と香辛料も(大抵商売のシーン)なので面白くないということにはならない。
さて、教会に危険視されている錬金術を監視するために派遣されたフェネシス。言わずもがな、みんなといきなりフレンドリーということにはならない。
疑うことも知らない世間知らずの幼き白きシスター・フェネシス。
錬金術師に対して恐怖や猜疑を抱きつつ、上から命令された通り監視を行う。
彼女は錬金術とは何なのかと度々クースラに問います。
何故そんなことをするのか? 意味はあるのか?
その回答として登場するのがマグダラです。錬金術師がその道を究めたときに到達する終着点。それがマグダラ。それを目指しているのだとクースラは答えます。
そのために自分は道を踏み外しても良いのだと。
それを聞いてフェネシスは何を考えるのか。
仲間のいない孤独な少女。彼女には追いかけるものは果たしてあるのでしょうか。
狼と香辛料の時もそうでしたが、下調べの調査がしっかりとされていることが読んでいてよく分かります。狼と香辛料とはまたひと味違う中世ファンタジーの幕開けです。面白い作品でした。