※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
奇蹟を起こせ
情報
作者:支倉凍砂
イラスト:文倉十
ざっくりあらすじ
狼神ホロの故郷ヨイツを探すため、北を目指す行商人ロレンス。
異教徒の街クメルスンで得た情報を元に、二人は田舎の町照テレオにやって来た。
テレオの教会にいる司祭は、異教の神々の話だけを集めた司教の居場所を知っているのだという。しかし、教会を訪れたロレンスとホロを出迎えたのは、無愛想な少女エルサだった。
それでも何とかヨイツの情報を得られないかと画策するが、いつの間にか村存続の危機に巻き込まれる。
果たして無事にヨイツの情報を手に入れて、村を出ることができるのか?
感想などなど
狼と香辛料の四作目。だれることもなくずっと面白い。
さて、今回の話では異教の神の存在が重要になってくる。異教の神とは教会の信じる神以外の神のことだ。雰囲気としては教会の敵といったところだろうか。
はて、今回向かったテレオの教会にいる司祭は、異教の神々の話だけを集めているのだという。
これはどういうことなのだろうか?
神を信仰し、異教の神を迫害し続けた教会の司祭が何故そのようなことをしたのか?
また、教会の司祭といえどもこの「異教の神々の話を集める」という行動は教会に反した行為。他の教会からは敵視されるはずである。
ここでテレオがものすごく大きな都市であって、強い権力を持っていたとしたら話は別だろう。いや、それでも厳しいくらいであるにもかかわらず、実際の所テレオは田舎の小さな教会だ。
しかも、旅商人であるロレンス達が簡単に「テレオの教会が異教の神々の話を集めている」という情報を掴んだのだ。他の教会が情報を掴んでいないとは考えにくい。
では、テレオの教会はいかにして情報を守りながら、村にあり続けたのか。
神の存在は狼と香辛料全体を通して度々語られる。
ではちょっと考えてみたい。神と呼ばれる存在で共通するもの……神は何故神と呼ばれるようになったのか。
色々理由はあるだろう。一度死んで蘇ったのかもしれないし、海を割って道を作ったのかも知れない。大地を作り上げたのかも知れない。
しかし、共通するものとして奇蹟……人知を越える何かをしたという点が上げられるだろう。
そして、神を神と定義する(こうはあまり言いたくないのだが)のは人であるという点も共通している。
さて、読んでいて経済要素がちょっと弱まったかなと思った。まぁ、作品の面白さには関係ない。安定した面白さでした。