※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
独特な世界観と文体の融合
情報
作者:田中ロミオ
イラスト:山崎透
ざっくりあらすじ
わたしたち人類が緩やかな衰退を迎えて、はや数世紀。すでに地球は妖精さんのものだったりします。妖精さんと人間との間を取り持つのが調停官としてのお仕事です。
そんなお仕事も決して楽ではなくて。
理解不能な奇妙なアイテムで体が小さくなったり、
現場復帰する祖父の助手サンをお迎えに何度も行くことになったり、
……。もうよく分かりません……。
お疲れの人類に刺激と安らぎを。
感想などなど
さて、最近「人類は衰退しました」のアニメを見ました。まぁ、その話は置いといて。
今回は「人間さんの、じゃくにくきょうしょく」と「妖精さんたちの、じかんかつようじゅつ」の二本立て。じかんかつようじゅつはアニメでもありましたね。
まずは「人間さんの、じゃくにくきょうしょく」から。
主人公こと ”わたし” は妖精さんが作ったとされる、よく分からない道具の解析をお願いされます。
履いてみればぐしょぐしょに水が溢れ出てくる長靴
予備の雲が入った瓶
喋らない物体が喋れるようになるワッペン
ブラックホールが入れられた缶詰
……などなど。人間の人知を遙かに超えた技術力と理解不能な性能を兼ね備えた道具の数々。
そんな中に一つポツリとあった計量スプーン。お菓子作りが趣味な主人公は早速使ってみるわけですが、まぁ、普通の計量スプーンのはずもなく……。
なんと人を縮めてしまう能力を持っていたのでした。めでたし、めでたし。
……いえ、何もめでたくはなく、どうやら人の大切な何かを取ってしまうようでありまして、小さくなった彼女はネズミと共に波瀾万丈な、正しく弱肉強食の四文字熟語が相応しい冒険物語を歩んでいきます。
ブラックユーモアたっぷりの奇妙な冒険譚でした。
さて、アニメでもやってました「妖精さんたちの、じかんかつようじゅつ」。アニメで見たときはよく分からなかったのですが、原作では時刻ごとに章立てされていて比較的分かりやすくなっていました。
物語の始まりは朝(?)11:00。起きて早々、助手の迎えに行って欲しいと言われ、向かう主人公こと ”わたし”。
道中妖精さんにバナナを貰い、存在不定の助手がいなくなったことを聞いて探しに向かい、バナナの皮にすっころび……
あらあら、不思議なことに時間が巻き戻って……?
今回はかなりSFチックな物語となっていた。最後のふわっとした終わり方も、SFっぽくて個人的に好きだ。
あぁ、感想を書くことが難しい。この作品自体何を楽しむかと言えば、腹黒主人公の軽快な文章や台詞回し、妖精さんの可愛らしいながらブラックユーモアじみた行動、全体に満遍なくちりばめられた社会風刺。
読んだ人なら分かってもらえると思う。感想を書くことがかなり難しい作品です。是非読んだことのない人は一度手に取って貰いたい。