※ネタバレをしないように書いています。
※これまで(出版順)のネタバレを含みます。
文化祭。彼女。夏は始まったばかり。
情報
作者:秋山瑞人
イラスト:駒都えーじ
ざっくりあらすじ
浅羽直之と伊里野可奈のデートを尾行する影が一人、二人、三人……そんなデートが平凡に、普通に終わるはずもなく、ただならぬ事が起こって?!
……正しい原チャリの盗み方・後編
文化祭といえばカップルで踊る最後のダンス! というわけでその原中学に巻き起こる一騒動。
……十八時四十七分三十二秒
夏はまだ始まったばかりである。
感想などなど
夏はまだ始まったばかりである。まだまだ彼ら、彼女らのUFOの夏は終わらない。
前回は浅羽直之と伊里野可奈のデートを尾行する人達の、賑やかな休日が始まろうとしているところで終わった。デートを尾行するという字面だけでも大分カオスだが、さらに事態はカオスに向かって行く。
2巻は1巻で大分謎だった伊里野可奈だったり、水前寺邦博だったりの隠された背景だったりが少しずつ浮き彫りにされていく。
例えば……伊里野可奈がバイクを盗んで尾行から逃げるというシーンがある。この一行だけでも大分おかしいが、何よりも注目すべきはその手際の良さだろう。とてもじゃないがそこらにいる女子中学生にできることではないし、教えたところでできるようになるかどうか怪しい。自分にも当然できない。
まぁ、基地に住んでいるという時点で怪しさ満点であったし、一巻の時点で彼女がただ者ではないということは分かるが。
そして我らが新聞部部長・水前寺邦博も彼女に追随する高スペック人間だった。1巻の最後でも独自の観察眼と洞察力、行動力にて、自分達と同じように尾行している人間を見つけ出した。2巻でももうちょっと活躍してくれます。
さて、これまで主人公を取り囲む高スペック人間を取り上げてきたが、主人公である浅羽直之はどうだろう。一体どんな力を見せつけて活躍をしてくれるのだろうか――と期待している人には申し訳ない。
彼は平凡を究めたどこにでもいる男子中学生だ。
バイクを盗む技術も度胸もなければ、伊里野可奈の背後に潜む強大な影の存在なんて考えもしない。ただただ日常を過ごす普通の男の子だった。
全4巻のうち半分が終わったことになる。しかし、読んで貰ったら分かると思うが、まだまだ日常パートが続いているのだ(伏線が張られているがそれは周回時のお楽しみだ)。
舞台は中学校。これから始まるのは文化祭。
新聞部も、基地のジオラマやUFOの模型を作って展示する。無論他に存在している部活も展示やイベントを行っていく。大盛り上がりの文化祭は、作品としてこれ単体でも楽しめるほどに濃い内容である。
この文化祭で大事になってくるのが、伊里野可奈の存在であろう。言ってしまえばずっと大切な存在ではあるのだが。
彼女はあまり登場しない。理由はあまり多くを語られていないし、断言もされていない。しかし、まぁ……うん。大体読んでれば察しがつく。つかない人は国語の勉強をした方がいい。
文化祭最後の大トリとなるイベントに、ペアを作ってダンスを踊るというものがある。
中学生それぞれが様々な思いを抱くであろうこのイベントで、浅羽直之は伊里野可奈とダンスを踊る約束をした。
開始の時刻が着々と迫ってくる。しかし、伊里野可奈はやってこない。
果たしてダンスを一緒に踊れるのか? 戦闘物というわけでもないのに、手に汗握ってしまう。
まだ日常が続く。
この作品がセカイ系(とある一人が世界の命運を担っている的な作品)に分類されるのも、ここまでだけ読んでいたら理解できないかも知れないが、3巻から先を読めば納得だ。
主人公はとてつもなく弱い。何か特別なことなんてできないし、超能力なんてもっての他。そんな彼はこの日常を通して、どう変わっていくのか。見物です。