※ネタバレをしないように書いています。
※これまで(出版順)のネタバレを含みます。
世界の命運は、彼らに託された。
情報
作者:上遠野浩平
イラスト:緒方剛志
ざっくりあらすじ
一見何も共通点のなさそうな六人の少年少女。彼らはみんな未来が分かるという不思議な力を持っていた。六人は一緒に仲間として、ささやかに能力を使って過ごしていた。
そんなある日。
「これ――ブギーポップ?」
都市伝説。噂。幻影。その姿を未来に見たとき、彼らの運命は狂い始める。
世界を終わらせる少女。
統和機構。
炎の魔女。
そして、ブギーポップ。
世界の命運は彼らに託された。
感想などなど
ブギーポップ四作目。前2冊目と3冊目がイマジネーターPART1、PART2ということで、まとめたとすれば三作目ということになります。時系列的にはスプーキーEがいるので、イマジネーターが現れる前ということでしょう。
今回は比較的親しみやすい世界観に物語。視点が変わっていく群像劇なのは相変わらずですが、今までと違って登場人物がみんな親しい仲間ということで、物語ごとの繋がりが分かりやすいかったです。
登場人物は六人の少年少女。産まれも育ちも何もかもが違っていて、共通点なんてないように思われる彼らには、「未来が分かる」という超能力を持っていた。
未来の見え方は人それぞれ。
「目を見れば未来で会う人が見える」<イントゥ・アイズ>
「未来の風景を描く」<自動写生 オートマティック>
「未来で行く場所の匂いが分かる」<アロマ>
「未来に聞く会話などを勝手に話す」<ウィスパリング>
「未来の出来事がぼんやりと分かる」<ベイビィトーク>
「未来の出来事が痣となって体に現れる」<聖痣 スティグマ>
どれもぼんやりとした未来しか分からないものであって、いつ起こる出来事なのか? 結局何が起こるのか? 釈然としない。
<ベイビィトーク>は「ギシギシしてる」とか「熱い」という実にぼんやりとしか分からない。<アロマ>で匂いが分かっても、<聖痣 スティグマ>で「東」と文字が浮かんだからといって何も分からない。<イントゥ・アイズ>だってそれ単体では使い道はないし、<自動写生 オートマティック>も自動ということでたまにしか使えない。
六人はそんな微妙な能力を使って分かる断片的な情報から、未来を推定していくことで、ささいな活動を行っていた。
人助けでもうすぐ赤ちゃんが産まれる女の人を助けたり、火事の通報を火事が起こる五分前にしたり・・・・・・やっていること自体は些細なことであるし、本人達も遊び感覚であるようだ。
しかし、そんな日常も終わりを告げる。
六人それぞれの能力の結果から、何かの薬? の取引が行われることを特定した。そこで警察に通報すればよかったのだが、仲間の一人――海影香澄――の発言で、六人は自分たちでその取引を止めることにする。
六人には自信があった。自分たちには力があると。六人の力を合わせればどんなことでもできると。
そこにちらつくブギーポップと怪しい少女。
彼らは世界の命運を握ることになってしまった。彼らは別に犯罪に手を染めたわけではない。”たまたま” 六人が能力を持っていて、六人が集って活動を行っていただけである。強いて言うなら、あまりこう言いたくはないのだが、「運が悪かった」ということなのだろう。
どうしてそんなことになったのか? 世界を滅ぼすほどの存在とは一体何なのか? そこらへんは本を買って貰うとして。
ここで考えて貰いたい。ブギーポップとはどういう存在だったか。
彼は自動的に現れる。世界の抑止力として彼は存在しているのだ。
今回のポイントは友情だろうか。彼ら六人は互いに「信用していない」と言っていた。確かに彼らは個人情報を隠して接していたし、出会いもかなり唐突なものだった。
そんな彼らが協力しなければ立ち向かえない、世界の危機に直面する。
最後の最後。彼らは皆、何を思うのか。
スカッとした読了感がたまらない。相変わらず面白かったです。