※ネタバレをしないように書いています。
相変わらず狂ってる。
情報
作者:片山憲太郎
イラスト:山本ヤマト
ざっくりあらすじ
揉め事処理屋を営む高校生・紅真九郎の元に、柔沢紅香によってとある少女を守るよう依頼される。少女の名は九鳳院紫。世界屈指の大財閥のご令嬢であり、どうやら命を狙われているらしいが、多くは語られないまま共同生活が始まっていく。
感想などなど
電波的な彼女と同じ作者ということで購入。デビュー作である「電波的な彼女」は狂気的な世界が売りであり、「えぐり魔」などかなり心を抉ってくるエピソードもありました。本作はどうなっているのか、期待せずにはいられません。
その期待はやすやすと越えてくれました。しかも、前作を読んでいると色々と楽しめるというおまけ付き。これからこの紅を読もうとしている方には、まず電波的な彼女を読むことをおすすめします。
では、作品の狂気に満ちた世界観を、私めの拙い文章力で紡がせていただこう。
まず「電波的な彼女」と世界を共有している。物語自体はそっちを読まなくても理解できるが、電波的な彼女の登場人物が出てきてニヤニヤできるので、改めてそっちから先に読むことをおすすめする。このブログはその前作を読まなくても、作品の魅力を伝えるよう努力させていただく。
主人公・紅真九郎は揉め事処理班を営む高校生だ。仕事内容は、まぁ、名前の通りである。
プロローグでは好きになった女性を傷つけてでも、監禁してでも自分のものにしようとする狂ったストーカー男とその被害者の女性の揉め事(もう警察の仕事だと思うが、警察はこの世界ではないようなものだ)を解決していた。それ以外にも、ヤクザに絡まれた人の揉めごとを解決したりしている。
普通に高校生がするような仕事ではないが、これがこの世界の ”普通” である。殺人事件は日常茶飯事、しかも狂気に満ちた事件の数々。警察は機能していないに等しい。こういった仕事が必要とされているのだ。
そんな彼に舞い込んだ仕事が、「少女を守って欲しい」というものだ。ちなみにこの仕事を持ち込んできた女性・柔沢紅香は、前作の主人公の母親だったりする。
その少女が世界屈指の大財閥・九鳳院家の娘なのだという。日本の影の支配者とも言われていると言えば、九鳳院家の強大さが分かって貰えるだろうか。
名前は九鳳院紫。小学生の幼女。流石は大財閥のお嬢様とでも言うべき我が儘さであるが、自分の非はきちんと認める良い子である。
そんな彼女を守ってあげることが任務として言い渡され、彼女と共に生活を共にしていく。
簡単に言ってしまえば、同棲である。
ここでちょっと考えて欲しい。国の影の支配者である九鳳院家の娘である彼女が命を狙われているというのは、比較的ありそうな話である。強大な力とは、大抵の場合、多くの犠牲と恨みと共に存在しているものだろう。そんな一家の一人娘にそんな殺意が向けられてもおかしくない。
しかし、だったら九鳳院家はもっとちゃんとした守り方というものがあるのではないだろうか。
紅真九郎は確かに揉め事処理屋を生業としているが、まだ高校生の新人である。さらに誰かを守るような仕事は、本来揉め事処理屋の仕事内容ではないのだ。彼に頼むというのはおかしい。
もっと別の目的があるようにしかおもえないのだ。
主人公も少し疑問に思いながらも、恩人である柔沢紅香の頼みであるし、彼は受け入れて九鳳院紫との生活を共にしていく。
彼女との生活は苦労もありながらも、実に楽しいものだった。紅真九郎のためにと色々と頑張る九鳳院紫は、読んでいて微笑ましい。
しかし、そんな生活が終わると、狂気に満ちたシステムの始まり。背筋も凍るような、気持ち悪さを覚えるような。アニメ化もしたそうですが、正直信じられません。
その狂気を上回るように、熱い紅真九郎の行動と展開は、拳を握りしめずにはいられません。一度嵌まってしまえば抜け出せないような世界観と物語でした。