工大生のメモ帳

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【映画】ドント・ブリーズ 感想

※ネタバレをしないように書いています。

動くな

情報

監督:フェデ・アルバレス

脚本:フェデ・アルバレス

   ロド・サヤゲス

ざっくりあらすじ

親と決別し街を出るために大金が必要になったロッキーは、恋人のマネーと友人のアレックスと共に、大金を持っていると噂の盲目の退役軍人の家に強盗に入る。

感想などなど

「死霊のはらわた」コンビが手がけた作品ということで前々から気になっていた映画の一つをようやく見ることができた。ジャンルとしては、「死霊のはらわた」同様にホラーに属する。

しかしホラーとは言いつつも、本作において心霊現象といった類いは一切登場せず、過度なグロ描写というようなものも(「死霊のはらわた」と比べると)ないにも関わらず、手に汗握る恐怖を体験することができる。90分足らずの尺内に詰め込まれた二転三転するストーリーと、印象に残る緊張の一瞬が詰め込まれており、無駄のない映画という印象を受ける。

一つ気になるのは、主人公であるロッキー含めた三人組が強盗、つまりは悪い奴らであるということだろうか。そのため、彼・彼女達がかなり酷い目に遭ったとしても、「まぁ、強盗だしな」という気持ちになってしまった。

その辺りの感じ方は人次第だろう。見続けていると強盗されている盲目の軍人側も、とんでもない犯罪者であると分かるので、お互い様だとも言える。

 

さて、ざっくりあらすじで書いた内容は、映画の序章の序章に過ぎない。強盗達が盲目の退役軍人宅に侵入し、軍人に発見されてからが本番である。

退役軍人というだけあって、家主はかなりの高齢である。しかも盲目で、強盗に入られていることは分かっても、正確な居場所までは(音を立てない限り)分からない。強盗にとってはかなり簡単な仕事だと思っていたことだろう。

しかし、実情は全くの逆である。

まず軍人ということもあり人殺しに慣れている。かなり序盤で一人が拳銃であっさりと撃ち殺されてしまう。目が見えていないにも関わらず、正確に拳銃で一発……鮮やかな腕前である。この時、強盗達は自身がとんでもない場所に強盗に押し入ってしまったことを悟るのだが、それはあまりに遅い気づきだった。

そして大金を持っているということもあり――軍人としての経験も生かされているのであろう――家の警備はかなり厳重なものであった。いや、正確に言うなれば『人を外に逃がさないための』準備が万全と言うべきだろうか。

家を出るための扉に複数の鍵を仕掛けている人は、日本に一体どれほどいるだろうか。人をどこまでも追いかけて本気で噛みついてくる盲導犬は、そこまで育てるために一体どれほどの労力が必要なのだろうか。強盗が来たことを知って、咄嗟に全ての窓という窓を板で封じる機転を働かせる人間が、この世にいるだろうか。

強盗を追い出そうとせず、まるで家屋内で皆殺しにしてしまおうという執念深さ。そしてそれを実行できるだけの実力を兼ね備えている。

 

少しでも音を立てようものなら、どこからともなく軍人がやって来る。しかも全ての明かりが消されたことにより、まさかの強盗達が圧倒的不利という状況。

それでも強盗達は大金を見つけ出し、それを持って何とか逃げだそうとする。しかし窓は全て閉ざされ、扉を開けようにも幾重にもかけられた鍵を開けることはできず途方に暮れる。

なんとか逃げ出すための策を探すため、家を探索すると……強盗もかなりの犯罪ではあるが、家主もそうとうの犯罪者であると分かってしまった。一軒家という狭い環境で展開される映画に、こうして二転三転する展開というものが生み出されていく。

ホラー映画としての演出もさることながら、何よりもブログ主的に評価したいのはそんな脚本である。九十分があっという間に過ぎ去っていく無駄のない展開は、かなり濃い映画体験を実現している。良い映画であった。

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