工大生のメモ帳

読書感想その他もろもろ

愛したアイス

今週のお題「私の好きなアイス」ということだが、真っ先に一つ思い出した作品がある。

世界の危機(もう少しで世界が滅びちゃうという状態)を察知して現れるとされる都市伝説上の存在ブギーポップと、そんな事件に巻き込まれてく人々の群像劇で描いたブギーポップシリーズの第七作目。軌川十助という全身が緑色の人間ではない何かが、ただひたすらに愛しているアイスクリームを作り続けるというだけの話である。

タイトルにもある通り、ペパーミント味のアイスクリームというのが特別な味として登場する。そのアイスというものがとてもとても美味しそうで、ブログ主は一時的にペパーミント味のアイスを好んで食べている時期があった。まぁ、あまりないのだけれど。

他にもアイスといえば『神様のメモ帳』にて登場するラーメン屋の店主ミンさんも忘れてはいけない。『神様のメモ帳』は個性豊かなニート達と、薬物や売春といった社会問題の色濃く反映された事件を解決していくミステリ作品である。

ニート探偵アリスの住むマンションの管理人にして、ラーメンよりもアイスが美味しいラーメン屋店主ミンさん。ヤクザのヤバい人だった父親とのエピソードはほろ苦い思い出と共に、彼女のエピソードはアイスのようにサラッと終わってしまった。個人的にはかなり好きなエピソードだが、残念ながらアニメでは描かれなかった。

他には感想では書いていないものの「アイスクリーム」が全く別の意味を持つことになる作品もある。アニメ化、実写映画化までされた『氷菓』だ。

タイトルが既にアイスクリームな訳だが、本作にはアイスを食べるようなシーンはなかったように記憶している。では氷菓とは何かという話になる訳だが、これは文集のタイトルである。

あらすじとしては古典部に所属することになった折木奉太郎は、部長である千反田えるの祖父が失踪した事件の調査をお願いされる。その捜査線上に文集『氷菓』の名前が浮上し……といった感じだ。読んだのは昔のことで、これ以上詳しく書けないことは許して欲しい。

だがこの『氷菓』の意味が判明するシーンだけは明確に記憶している。ブログ主のような人は多いのではないだろうか。

 

アイスはある種の夏の季語として機能することが多い。アイスを食べている様子が描写されれば、何となく夏なんだなという気がする。しかし、上記に紹介した作品はどれも、季語としての機能ではなく、ある個人を印象づけるためのアイテムとして利用されていた。

おそらくだが季語としてのアイスは、読者の記憶に残らないのだろう。アイスとは、キャラクターと紐付いてでしか覚えることのできないアイテムなのかもしれない。

となると我々の記憶に残るアイスというのは、必ず誰かが隣にいるものなのではないか。創作から一旦離れ、リアルの記憶というものを考えてみると、確かにそんな気がする。

あなたの愛したアイスには、隣に誰かが立っていないだろうか。その誰かが遠い記憶の果てにいるというならば、たまには連絡を取り合ってみるのも悪くないかもしれない。