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【漫画】よふかしのうた7 感想

【前:第六巻】【第一巻】【次:第八巻
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※ネタバレをしないように書いています。

今日に満足できるまで夜ふかししてみろよ

情報

作者:コトヤマ

試し読み:よふかしのうた (7)

ざっくりあらすじ

七草ナズナの過去を知るために、家にあった診察券から本田カブラが働いている病院にたどり着いた二人。そこで明かされるナズナの過去とは……。

感想などなど

「ナズナちゃんはカブラさんの眷属なんですか?」という問いを、本田カブラに投げかけたところで終わった第六巻。

カブラとナズナの写った写真が登場した辺りから、そのような予想は立てられる。それにしてもナース服カブラさんエッチだ……とどうでも良いことを考えている間に、コウの問いは否定される。

吸血鬼の設定には下記の二つがある。

一つ、吸血鬼は人間だった時の記憶を失っていく。ナズナが人間だった頃のことを全く覚えていないのは、経過時間を考えるとあまりに早すぎる。

二つ、血を吸えば相手の感情や考えていることがなんとなく分かる。これは色々なことに利用でき、その方法の一つがこの第七巻で提示される。自分に関する誰かの血を残しておけば、その血を飲むことで記憶を再び呼び起こすことができる。

本田カブラは吸血鬼になる前の人間の血を残しておいた。人間だった時のことを忘れないために、定期的にそれを飲み、記憶を継続させ続けた。その大事な血を一滴、七草ナズナにあげた。

そうして物語は回想へと移る。

そこには七草ナズナによく似たナースと、病気で入院が続いていた本田カブラの姿があった。

 

七草ナズナによく似たナースの女性、彼女の名前は七草ハルという。一方、本田カブラは幼い頃から身体が弱く、入退院を繰り返していた。夜に突然鼻血を出したり、外を出歩くにしても細かく休憩を挟まなければならない。

健康的な一般人と同じ速度で生きていくことができない。

そんな彼女であるが退院した際に遊んでくれる友達がいた。鏡の前に立って病院の服とは違う、オシャレな余所行きの服で着飾った本田カブラは、いつものように友達の待つ場所へと向かった。

そして始まる飲み会……会場である居酒屋に向かうまでが大変で、着いたら着いたで酒は飲めない。知らない男もいて、知らない話をしている。そこで感じる疎外感に苛まれ、彼女は少しずつ壊れていく。

そこに追い打ちをかけるように、叩かれる陰口。「介護してるみたい」という友達の言葉が、また入院することになった時の母親の面倒そうな顔が、彼女を限界まで追い詰める。

それでも声を荒げない、怒りを表に出さない本田カブラに変わって、怒ってくれたのが七草ハルだった。そこから解放された時――つまり七草ハルが吸血鬼で、彼女はハルに恋をして、彼女を眷属にした時――空を飛び走れるようになった時の本田カブラの笑顔が最高に可愛い。

さて、誰もが気になるであろう七草ナズナの過去について。

結論から言うと、彼女は七草ハルの娘だ。

 

七草ハルは、人と本気の恋をした。その果てに結婚……といっても戸籍とかないので書類上できないのだが。そしてその男性との子をなした。ハルはそこから血を吸おうとはせず、死んでいった。

この辺りの事実が、この第七巻では非常にあっさりと描かれている。そもそも本田カブラから見た記憶の話で、「ハルが何を思って血を吸わずに死ぬことを選んだのか」「どうして子供を産む覚悟を決めたのか」その辺りは想像で補うしかない。

分かるのは、残されたハルの子供ナズナの世話を、本田カブラに託されたという事実と、赤子同然だったナズナの世話をきっちりこなしたということだけ。この第七巻を経て、本田カブラのキャラが大きく変わっていく。

七草ナズナに向けている感情を表に出さないようにしていたにも関わらず、ここからダムが決壊したかの如く、ナズナにデレデレしベタベタする。そらそうだ、ずっと育ててきたのだし、かつて愛したハルさんにそっくりなのだから(ナズナを膝に乗せるカブラ好き)。

そして大事なこと、ナズナさんは誰かに恋して吸血鬼になった訳ではない……だからなんだと言われそうだが、男は全員処女信仰という暴論を投げかけて、この記事は締めたいと思う。

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