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悪役令嬢の役割は終えました2 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

悪役令嬢のその後……

情報

作者:月椿

イラスト:煮たか

試し読み:悪役令嬢の役割は終えました 2

ざっくりあらすじ

副騎士団長ヴォルフと結ばれることとなったレフィーナであったが、ヴォルフの父は庶民の娘であるレフィーナのことを認めようとはせず、色々と嫌がらせを仕掛けてきて――。

感想などなど

前世での妹・ソラを助けるため自身の寿命を引き渡し、転生した先では悪役令嬢としての役割を全うすることを神に命じられ、その役を果たしたレフィーナ。彼女の苦労の全ては報われ、幸せな生活を掴んだ……かに見えた第一巻。

第二巻ではヴォルフの人間関係の清算と、レフィーナを含めた登場人物達のその後が描かれていく。第一巻を読んで、幸せを掴んだとはいえどこかモヤモヤを抱えたという人は、第二巻を読むことをオススメしたい。

ご都合主義と言われるかもしれない。神といえばどんな無茶でも許されるのかと突っ込みたくなるかもしれない。それでも、顕在していたあらゆる問題が解決して迎えるハッピーエンドは読んでいて清々しいものである。

そんなレフィーナの幸せのため、第一巻で奮闘してくれたヒーローの一人・ヴォルフについて見ていこう。

 

ヴォルフは副騎士団長という華々しい男の中の男である。第一巻において、レフィーナのために戦った勇姿はご覧いただいただろう。レフィーナに前世があるといった話を聞いても受け入れたというのもポイントが高い。

そんな彼の父を名乗る貴族の男が現れた。その名をアングレス・ボースハイトという地位は伯爵である。レフィーナと彼とのファーストコンタクトは最悪と言わざるを得ない。

値踏みするような視線、「……やはり相応しくないな……」という台詞。高圧的な態度。そのどれをとっても、男らしく、(レフィーナに対して)とことん甘く、不器用なヴォルフの姿とは重ならない。

ただヴォルフと同じ焦げ茶色の髪に、金色の瞳をしている。信じたくないがヴォルフは彼の息子なのだろう。そんな父がレフィーナに向ける視線は嫌悪感、そして副騎士団長となった息子を連れ戻すという野心であった。

連れ戻すという言葉は不正確だ。彼は「程度の低い庶民と結ばれることより、貴族になる道を選ぶ」と信じているのだ。

……そもそもヴォルフは貴族の生まれでありながら、どうしてこのような立場になっているのだろうか。それには壮絶な過去があった。

そもそもヴォルフの母親・スフィアは、妻がいる男にも手を出すような女であった。ボースハイトからしてみれば、適当に抱ける都合のいい女だったのかもしれない。そして妊娠、ヴォルフが生まれた。血統を何より大事にしているボースハイトにとって、庶民の女との間に出来た子供には興味なんてなかったのだろう。認知はされず、母親一人でヴォルフを育て上げた。

ただこの母親もまた屑であった。なんと男と上手くいかないことがあれば、ヴォルフに手を上げたのだ。また、ヴォルフが成長するにつれて彼を男として見るようになるというオマケ付きである。

そんな母親の最期は、手を出した男の妻に刺されるという自業自得の結末だが、息子としては受け入れがたい死であった。

そんな両親には恵まれなかった彼だが、環境には恵まれたということなのだろう。よくもまぁ、こんなにまっすぐな男に育ったものである。そんな彼を貴族に迎え入れるために行ったボースハイトの気色悪さを是非とも見てあげて欲しい。

彼の没落は一瞬である。ここでもまた、レフィーナの優しさを知っている者達の覚悟と行動があった。先ほどご都合主義という風に書いたが撤回しよう。全てはレフィーナの人格が招いたハッピーエンドである。

 

後半はレフィーナとヴォルフの新婚生活を描いた短編や、雪乃と契約を結んだ神の科小話を描いた短編、前世で生き残ることができたソラの生活風景など、それぞれの幸せな物語が描かれていく。

個人的には完結した物語のその後には興味はないし、読みたくない派閥の人間なのだが、ここまでが『悪役令嬢の役割は終えました』としての結末だと思うと満足度が高い。

幸せな物語であった。

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