工大生のメモ帳

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六人の赤ずきんは今夜食べられる 感想

※ネタバレをしないように書いています。

裏切者は、誰だ。

情報

作者:氷桃甘雪

イラスト:シソ

ざっくりあらすじ

名声のために罪を犯した過去を恥じ、今は猟師として各地を旅する「私」。その旅の道中で奇妙な警告を受ける。

『森に住む赤ずきんは、毎年赤い月の夜、狼の化け物に食い殺される。しかし、絶対に救おうとしてはいけない』

赤ずきんである六人の少女と対面した私は、彼女たちを守ることを決意する。

感想などなど

ジャンルとしてはミステリーに入るのだろうか。次々と明かされる新事実に、謎が謎を呼ぶ展開。血なまぐさい狼との頭脳戦。様々な要素がこれでもかと詰め込まれている。

今回の作品で登場する敵は、巨大な狼だ。「もののけ姫」に登場する巨大な山犬(狼?)を想像して頂きたい。正しくあんな感じだ。

もうその大きさの時点でただ者ではないのだが、こいつは何と人並みに頭を使って襲ってくる。

地下に穴蔵を作って匿っていれば、水を流し込まれて殺される。

レンガの家に入れておいても、穴を掘って地面から侵入する。

どこか遠くまで逃げたとしても、かならず追いつかれ食べられる。

あらゆる手を尽くそうとも、赤ずきんは殺され食べられてしまう。村人はいつしかもう諦めてしまった。そこに現れた主人公。彼女たちを守る、狼を殺すと誓う。

しかし彼は舐めていた。敵は狼だけではなかったのだ。

 

さて今回は六人の赤ずきんを守るわけだが、この六人が非常にややこしい。簡単にその六人を説明していこう。ちなみに以下に示す秘薬とは、それぞれの赤ずきんが作ることのできる薬のことであって、能力のようなものだ。

『ツバキずきん』・・・・・・人の体温に反応して硬化する秘薬を持つ。

『紅茶ずきん』・・・・・・ものを透明化する秘薬を持つ。

『ざくろずきん』・・・・・・どんなものでも粉々に粉砕する秘薬を持つ。

『チューリップずきん』・・・・・・どんな状況下でも自然発火する秘薬を持つ。

『リンゴずきん』・・・・・・他の生物に一時間程度変身できる秘薬を持つ。

『バラずきん』・・・・・・あらゆる物の匂いを消す秘薬を持つ。

どの秘薬も非常に強力な効果を持っている。しかし上に示した説明では本来足りない。色々と小難しい制約が存在する。例えば『紅茶ずきん』の秘薬の効果は、物体が秘薬で濡れている間だけだし、『ざくろずきん』の秘薬の効果は生物には利かない。『バラずきん』の秘薬も、変身している間は変身している生物の知能レベルになってしまう。

そんな感じでややこしい秘薬を駆使して、最強の狼と相対する。

 

戦いの最中、どう考えてもおかしいことに主人公は気がつく。

主人公はまず最初、村を離れることにした。『バラずきん』の秘薬を使って匂いを消して、できるだけ人目に付かないように最善を尽くした。

しかし狼はこちらを正確に捉えて、まっすぐ向かってくる。

狼とは夜目があまり利かないらしい(正確に言うと色があまり識別できないらしい)。聴力はいいが、音で赤ずきんかどうか何て分かるはずもない。だからこそ匂いを消したのだが、奴は追いついてくる。

それ以外にも、明らかに赤ずきん達の秘薬の効果を知っているかのような行動を取り続ける。

極めつけは「とある魔女の召使いの手記」。

書かれていたのは「狼の正体と目的」。簡単に説明すると、「狼は魔女が赤ずきんを皆殺しにするために生み出した存在であり、魔女は赤ずきんに混じって狼を先導している」ということだった。

真実を知ってしまった主人公。敵は狼と赤ずきんの中にいるという魔女の二人。頭脳戦が始まる。

 

展開がかなり早い。情報が次から次へと飛び込んできて、片時も見逃せないシーンが続きます。推理して楽しむというよりは、そんな目まぐるしい展開を楽しむ作品となっています。