※ネタバレをしないように書いています。
闇を切り裂く黒になれ!
情報
総監督:野村和也
監督 :篠原啓輔
脚本 :ハヤシナオキ
HP :BLACKFOX公式サイト
ざっくりあらすじ
近未来の大都市に似合わない忍者屋敷。そこで暮らす忍者一族である石動家・律花は、忍者ではなく研究者である父親に憧れを抱いていた。平和な日々が続くとき、突然何者かによって屋敷が襲撃を受けてしまう。
感想などなど
ひとまず公式HPに用意されているPVというものを見て欲しい。もしくはあらすじを見て抱いた感想というものを、心の中で噛みしめて欲しい。
一番目を惹くのは『忍者一族』というワードではないだろうか。PV内では短刀片手に斬り合うシーンというものが描かれ、戦闘シーンに注力したような印象を受ける。『闇を切り裂く黒になれ』という煽り文句も、夜闇を走る忍者のイメージと合致している。
実際、映画ということもあり戦闘シーンは激しく動くし、構図や演出も工夫されているように感じた。さすがは『プリンセス・プリンシパル』や『ソード・アート・オンライン』の制作を行ってきた会社である。その点は全く心配ない。映画冒頭では忍者屋敷のギミックが、視覚的に戦闘を面白くしており心惹かれる。
しかし、本作はそういった忍者アクションというよりも、SFという方がしっくりくる。なにせ主人公である律花が、映画を通して戦うことになる相手というのは忍者ではなく科学者であり、見ていると「忍者って何だっけ?」という不思議な感覚に陥るからだ。
本映画の舞台設定は近代都市となっている。特に目を惹かれる技術としては、大まかに言って二つ。
一つ目は『アニマルドローン』。動物を精巧に模して作り上げられた機械であり、優秀な人口知能を搭載。人間の言葉を、自ら選んだ教材で学び操ることができるようになる。律花の父親が作り出し、娘に「友達になって上げて欲しい」としてプレゼントした……つまりは人間とのコミュニケーションが自立して行えるほどの有能だということである。
しかも後々ハッキングや監視、映像を空間に映し出す技術などまでも搭載されていることが判明し、知れば知るほどにとんでもない技術の結集された存在であることが分かっていく。
律花に与えられたアニマルドローンは犬と鷲とリスの三体。彼らと協力して、潜入や戦闘を行っていくことになる。
二つ目は『超能力』。どうやらサイコキネシスといった能力を、科学的に解明し扱えるようになったようだ。代わりに記憶や人格までもが奪われるようで、しかも誰もが絶対に扱えるようになることもないらしく、実用化には至れないようだが。
あらすじでも示したように、律花の家は謎の襲撃を受ける。その相手の一人が、この『超能力』の使い手だったのだ。ストーリーの本筋としては、この『超能力』の使い手を含めた襲撃してきた相手への復讐すること、となっている。
これまでの説明で、設定はSF、ストーリーは復讐、アクションは忍者風であるということが分かって貰えただろう。だとすると、ブログ主はどこをおすすめできるポイントとして紹介することができるだろうか。
忍者と超能力者の戦闘というものが、何度か作中で描かれる。超技術によって行われる漫画のような忍者アクションは、アニメーションだからこそできる表現だった。フワフワと能力で浮かぶ相手と、壁を蹴り自由に移動する忍者との対比は面白いと思う。
ストーリーにおいて復讐というワードが繰り返される。律花は大学に合格しており、科学者としての夢を捨ててまで忍者としての仮面を被った。ある意味テンプレ通りの展開ではあるが、テンプレは面白いからテンプレなのだ。
設定はかなり説明を省かれているような印象を受けるが、ストーリーを理解する上での障害になるほどではない。この世界における技術の程度が良く分からないので凄さというものがイマイチ伝わって来なかったな、と見終わった今は思うが、見ている最中には気にならなかったので大した問題ではないだろう。
本作の評価というものは、イコール登場人物達に魅力を感じることができたかに直結するように感じる。映画の尺の問題でしかたないが、律花が復讐に燃えて、その復讐相手を見つけ出すまでの半年間が描かれていない。何故か探偵見習いとして職に就いていたが、いきなり出てきた探偵所長は何の活躍もしなかった。
超能力者であり、律花にとっては復讐相手であるミア。父親の研究対象になっていた過去があり、「大好きだよ」と言ってくれる父親には絶対服従。そんなミアの言動の数々というものは、全てが全て褒められたものではないだろう。
ワンクールのアニメでやっておけば、いくらでも化ける作品だったと思う。九十分では物足りなさを感じる作品だった。
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