工大生のメモ帳

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ブギーポップ・ミッシング ペパーミントの魔術師 感想

※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます(出版順で一巻の感想はこちら→ブギーポップは笑わない 感想 - 工大生のメモ帳

天才で、成功者で、失敗者。

情報

作者:上遠野浩平

イラスト:緒方剛志

ざっくりあらすじ

これはアイスを作る天才の、成功から失敗、未来のないとある魔術師の物語。

それはあまりに一瞬で、あっという間に溶けてしまうほど痛烈で甘く冷たかった。

感想などなど

あらすじ(?)では一瞬と書いたが、時間軸的に見ればとても長い。物語の始まりは『歪曲王』にて登場した寺月恭一郎が死ぬよりも前まで遡り、事件の終わりは『イマジネーターPART2』の事件が解決した後である。その間、数年ほど経過していた。

しかし事件はあまりにあっさりと進行し、あっさりと終わっていく。三部構成なのだが、事件が起こり一旦解決するまでを読みたいのであれば第一部で十分だったりする。残りの第二部、第三部はエピローグに過ぎない。

それにブギーポップはさほど関わっていないし(まぁ、毎回そうか)、統和機構も関わっているとは言えど、事件の中心人物である軌川十助の能力を測り切れていなかった節がある。実際、彼は失敗作だったと統和機構では言われている。

今回は事件に巻き込まれていく人々よりも、事件の中心にいる「ペパーミントの魔術師」こと軌川十助の生涯に焦点が置かれていた。

ということで軌川十助について語ることはどうしても外せない。

まず前提として、彼は人間ではない。肌が緑色の人間がいるというのであれば、是非ともお目にかかりたいものだ。

そして、彼はアイスクリームをこの世界の誰よりも愛していた。だからこそ自らアイスクリームを作り続けていた。

ここまでだと、ただのアイスを作る人外である。問題なのは彼が作るアイスと彼の持つ能力だ。

彼の能力は人の抱えている痛みが分かるという物。小難しく書いてみれば「精神と肉体の指向性を体感として感じられる」(寺月恭一郎談)。

そんな他人の心の痛みが分かる彼は、そのズキズキとくる心の痛みを和らげるようなアイスクリームを作ることができた。人とは誰もが心に痛みを抱えているものである。その痛みを和らげるために人々はアイスを求めた。それはもう飛ぶように売れた。

もうそれは一種の病気であるかのように。一部の人間は中毒症状に陥ってしまって、彼の作ったアイスを求めるようになっていた。

 

さて上記が簡単な事件のあらましのようなものだ。そんな今回の事件において注目すべき点は、二つ挙げることができる。

まる一つ目。軌川十助は、自分の能力の危険性などを理解していないという点。彼にとってはただ自分の好きなことをしていただけであって、それ以上の理由がなかったのだ。

そんな彼を悪者と決めつけることができるのだろうか?

次に二つ目。彼が人間ではないという点。冒頭で示されている通り、彼はずっと地下に閉じ込められていた。彼と人間社会とのつながりは、父親役であった軌川典助のみ。人との関わりのないまま、人間社会に放り出され、能力があったばかりに統和機構に目を付けられた。

何度でも書かせていただこう。そんな彼を悪者と決めつけることができるのだろうか?

さて本作でその結論は、世界の抑止力であるブギーポップに託された。

 

第二部、第三部では事件によって生活を壊された人々の、その後が描かれている。

どれほど書けばネタバレになってしまうのか、判断がしにくい部分だ。

実はあのキャラが生きていたとか、お前の能力そんなんだったのかよとか、統和機構容赦ねぇなぁとか、書きたいことは山ほどある。

天才であり、成功者であり、失敗者であるペパーミントの魔術師のたどり着く結末を、どうか見て欲しい。

ブギーポップ・ミッシング ペパーミントの魔術師 (電撃文庫)

ブギーポップ・ミッシング ペパーミントの魔術師 (電撃文庫)

 

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