工大生のメモ帳

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”文学少女”と飢え渇く幽霊 感想

※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます(一巻の感想はこちら→”文学少女”と死にたがりの道化 感想 - 工大生のメモ帳

彼女を殺そう。

情報

作者:野村美月

イラスト:竹岡美穂

ざっくりあらすじ

文芸部部長、天野遠子。後輩の井上心葉は彼女に振り回される毎日を送っていた。

そんなある日、文芸部「恋の相談ポスト」に、「憎い」「幽霊が」と言った言葉の書き連ねられた紙片が投げ込まれていた。見つけた犯人は「わたし、もう死んでるの」と笑う少女で・・・・・・。

感想などなど

やって参りました第二巻。冒頭の一行目からいきなり「彼女を殺そう。」という不穏な立ち上がり。一体何の作品が主題となってくるのか? どんな事件が巻き起こってくるのか? 期待に胸が膨らみます。

一巻は「道化を演じていたとある少女が、苦悩して起こした事件」でした。分かりにくいと思われるかも知れませんが、こうとしか自分の語彙力では説明できないことを、どうかお許し下さい。ただでさえ事件には複雑な心情が描かれているのです。読んでいない人は是非一巻を読んでいただきたい。

華麗なトリックを追いかけるミステリーではなく、複雑な人間模様が巻き起こす事件を解決するミステリーであることは今回も変わらず。

というか暗さがさらに増しています。

事件の始まりはポストに投げ込まれた紙片。そこには鉛筆で殴り書きされた「憎い」「助けて」「幽霊が」「怖い」「苦しい」「消えて」・・・・・・という不穏な言葉の羅列。

普通にここで「あれ、ホラーかな?」と思うわけですが、そんな紙片を投げ入れた人物を見つけた時、更なるホラー的展開に突入していきます。

朝から晩までポストに張り付いて犯人を捜す二人の前に現れた美少女、雨宮蛍。彼女は九条夏夜乃と名乗り、「わたし、もう死んでるの」と笑って言い放つ。

気になって調べてみれば、九条夏夜乃はもう既に死んでおり、つまり雨宮蛍は死んだ人の名前を名乗り、紙片を投函していたことになる。

今回の謎は、「何故彼女が紙片をポストに入れたのか?」・・・・・・というよりは、「何故彼女は九条夏夜乃と名乗ったのか?」と言った方がいいでしょう。

死んだ人間になりすます状況とは一体どんなものなのか?

 

今回、度々登場する作品はエミリー=ブロンテ著『嵐が丘』。

世界三大悲劇とされているそうですね。自分は全く知りませんでしたが、この作品を読んで近所の図書館に探しに走りました。

簡単にあらすじを説明すると「『嵐が丘』で恋が巻き起こす悲劇」。

・・・・・・いやぁ、これは簡単には説明できないですね。悲劇の原因は恋だけじゃないですし、欲望や嫉妬が複雑に絡み合ってドロドロとして、主人公も何がしたいんだかよく分からなくなって――と救いがない。簡単に一言で説明してはいけない作品という気がします。

もしこの作品を読んだことがあるという人ならば、今回の事件の背景で起きている悲劇は、あっさりと分かってしまうかも知れません。それほどまでに事件の根幹を担っています。

まぁ、読んでいなくても理解できますし、作者の方も「読者は読んでいない」という前提で書いているような気がしますので、問題はありません。しかし探してでも読みたくなることをお約束いたします。

 

さてタイトルについてちょっと考えてみましょう。

飢え乾く幽霊・・・・・・。幽霊とは基本的に死んでしまった人が、成仏できずに現世に残ってしまったものです。

あらすじにも示した通り、分かりやすく「死んでしまったのに現世に蘇ってしまった人」が登場しています。彼女が幽霊なのでしょうか?

・・・・・・さて良いことをお教えしましょう。死んだ人は蘇りません。

ゾンビにでもするか、時間を巻き戻しでもすれば蘇るかもしれませんが、この作品はSFではありませんのでご安心を。

結局怖いのは幽霊よりも人ということなのです。あまりにも悲しい残酷な真実と結末が待っていました。

 ↓次巻の感想はこちら

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