工大生のメモ帳

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”文学少女”と慟哭の巡礼者 感想

※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます(一巻の感想はこちら→”文学少女”と死にたがりの道化 感想 - 工大生のメモ帳

真実を知る覚悟はあるか?

情報

作者:野村美月

イラスト:竹岡美穂

ざっくりあらすじ

天野遠子の卒業もあと少しに迫ったある日。それを寂しく思う一方で、ななせと初詣に行ったりと距離を縮めていく心葉。そんな彼女が怪我をして入院したと聞き、見舞いに行った彼は一人の少女と再会する。

感想などなど

前回「穢名の天使」では、教師と生徒の純粋な恋の物語と、残酷な心の闇が痛切なまで描かれていました。さらに、これまでどこか距離のあった芥川やななせとの距離が近づき、友達として良い関係性を築くことができたように思います。

今後は彼らの優雅な学園生活が続いていくのか・・・・・・と思いきや、世の中そう上手くはいきません。彼らの関係性に深い溝を産むよな事件が発生します。早速中身について軽く記していきましょう。

 さて、文学少女シリーズを説明すると「過去にトラウマを抱いた人物が引き起こす(巻き込まれる)事件」を文学をこよなく愛する少女が想像して解決するといったところでしょうか。では、今回心の闇をさらけ出してくれるのは一体誰なのか?

結論から言ってしまえば、今回過去が掘り下げられるのは主人公である井上心葉です。第一巻から心にトラウマを抱いていることは、何となく示唆されていましたが、いよいよやばそうな過去の闇が語られていきます。

ここで重要な立ち位置となるのが――まぁ、多くの人が察せられるでしょうが、度々名前が登場する美羽です。

彼女が飛び降りていくシーンが、度々作中でフラッシュバックしてきます。なので「美羽は死んだんだな」と思っている人が多いと思うのですが(自分は死んだと思ってました)、どうやら飛び降りた際に木に引っかかるなどして、足腰が不自由になりながらも、命だけは助かったようです。

そんな飛び降り事件の後、別の学校に引っ越してしまって以来、会うことのなかった彼女との再会。

ここで考えなければいけない点は、「何故彼女が飛び降りたのか?」という点です。

飛び降り事件によって心に深い傷を負った心葉が、作品を書くことができなくなって、家に引きこもることになりました。そんな彼はずっと、彼女が飛び降りた理由を考え続けていました。しかし、どんなに考えても分からない上に、確かめる手段もなかったのです。

そんな彼の前に現れた美羽・・・・・・。

飛び降りることには相当の覚悟が必要でしょう。本来ならば彼女は死んでいたのですから、死ぬつもりだったはずです。

彼女がそこまでの覚悟を抱くことになった理由を、追いかけていくことになりますが、心葉の心には「自分が彼女を追い込んでしまったのではないか」という疑惑と罪悪感がふつふつと湧き上がってきます。

真実を知ってしまえば後悔してしまうかも知れない・・・・・・。そんな心葉の葛藤も見所の一つでした。

 

今回の作品は宮沢賢治『銀河鉄道の夜』。知らない人はいないのではないでしょうか。

ざっくりとあらすじを書くと「ジョバンニとカムパネルラが銀河鉄道に乗り込んで旅をする」。童話なのでかなりさっくりと読めるます。読んだことがないという人は是非読んでみて下さい。

そんな『銀河鉄道の夜』の結末が複数あることはご存じでしょうか。ちなみに自分は文学少女を読んで始めて知りました。

どうやら宮沢賢治が度々書き換え、その時々で結末が変わっていたそうです。

物語の結末は、作者が一番伝えたいこと、書きたいシーンであることが大半です。その結末が度々書き換えられているというのは、一体何を意味しているのでしょうか。

 

これまで多くの事件を乗り越えて、ななせや竹原さんや芥川君などの友人ができました。そんな彼らに支えられて、明るい学園生活に足を踏み出そうとしていた・・・・・・はずだったのですが。美羽によって乱されてしまいます。

美羽のことを知っていたななせ。

美羽と連絡を取り合っていた芥川。

どこか怪しい動きを見せる竹原さん。

そんな彼らの言葉は嘘だと言い張る美羽。

美羽を信じたい・・・・・・けれど、ななせや芥川も信じたい・・・・・・。情報が錯綜し、誰かが嘘をついていないとおかしい状況。心葉は何を信じるのか。

過去に引きずられ、自分の殻に閉じこもっていた彼の選択と成長によって、導き出した答えと結末。最後の会話シーンには、心が震えました。

 ↓次巻の感想はこちら

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