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Missing 神隠しの物語 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

『物語』は感染する

情報

作者:甲田学人

イラスト:翠川しん

ざっくりあらすじ

幼い頃『異界』から生還した過去を持つ少年――空目恭一は、関わる者全てを『異界』へと連れて行ってしまう都市伝説を持つ少女と出会う。

感想などなど

本作はライトノベルにしては珍しいホラーであることを、最初に紹介しておこう。これまで多数のライトノベルを読んで感想を書いてきたが、その中でも本作はかなり異質であると言えよう。

ホラー作品は媒体に関わらず読んで見てきたことがある。それぞれ読者・視聴者を怖がらせる敵というものが登場し、ギミックを凝らした恐怖というものを提供してくれる訳だ。

映画『リング』では貞子。映画『呪怨』では伽椰子。小説『パラサイト・イヴ』では進化したミトコンドリア。映画『13日の金曜日』ではジェイソン……というように。

そして、そんな敵と相対して何かしらのアクションを起こしていくことで物語を生み出していく。例外として敵にただ殺されていくシーンを描いていくものもあるが。

映画『リング』や映画『呪怨』では、ただ皆殺しにされていくシーンが淡々と描かれていく。小説『パラサイト・イヴ』では敵の正体を見極めて封印すべく研究者が行動していく。映画『13日の金曜日』の初代では、敵の正体を推理(それほど大げさではないが)しながら見ていくことになる。

では本作Missingにおける『敵』と、それに対する『アクション』はどのようになっているのか。

 

まずは『敵』について説明していこう。

一言で言うなれば、タイトルにもついている『神隠しの物語』こそが敵である。それ以上でもそれ以下でもない。

では神隠しというものを皆さんは御存知だろうか。奇妙な状況で人が忽然と消えてしまう現象もとい物語のことである。子供の失踪事件が起これば神隠しだと騒がれ、テレビやネットが大騒ぎになるので知っている人も多いことだろう。

本作における重要な登場人物である空目恭一は、過去に神隠しに遭遇したが生還した過去がある。今回は再び、彼が神隠しによって消えてしまうのだ。

空目恭一は多大な読書量によて得た知識と、それを生かせるだけの頭脳を兼ね備え、クラスメイトからは魔王だったり、陛下だったりと呼ばれ、恐れられながらも愛されている人であり、同じ文藝部員達が彼を助けるべく行動を開始することになる。

この文藝部員達が空目を助けるべく調査していくことが、本作における『アクション』に当たる。

さて、助けるといってもどのように手を付けていけばいいか分からない。ここで目を付けたのが、これまでの空目の行動である。

まず、空目はどうして神隠しにあってしまったのだろうか。その原因、実は空目自身にあったりする。

冒頭にて空目は、他の子には見えていない不思議な少女と出会う。そして、

「お前が何であるか知っている」

と告げ、

「――――その上で聞く。俺と共に行かないか?」

と言って手を差し伸べた。

その後、少女を彼女として知り合いに紹介して回っている。名前はあやめと言うらしい。

少女と接触した人達は『異界』らしき世界へと送り込まれそうになる。結果として文藝部員達が消えてしまうことはなかったが、ただ一人空目だけが神隠しにあってしまったらしい。

……文藝部員達はそんな空目の行動に首を傾げていた。

状況を鑑みるに、彼が神隠しにあった原因はあやめという少女であろうことは間違いない。つまり自ら神隠しされにいっているとしか考えられない訳だ。天才や魔王と称された空目が何を考え、神隠しに接触したのか。

救うために行動する文藝部員達にとって、それは重要なヒントであった。

 

文章によるホラー表現は見事と言わざるを得ない。『異界』という現実ではない世界と、現実との世界が繋がっていく感覚。

徐々に世界観と設定を理解していくごとに、その恐怖は説得力を持っていく。普通、敵の正体を知ることで恐怖は和らぐというのに。知ること自体が、ある種の恐怖体験へと繋がっていくのである。

それらは全て膨大なオカルト知識によって裏打ちされて描かれている。そのため小難しい印象を与えるかもしれないが、それでも問題ないという方は読むべき作品であると思う。

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