工大生のメモ帳

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なれる!SE10 闘う?社員旅行 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

行き先は熱海

情報

作者:夏海公司

イラスト:Ixy

ざっくりあらすじ

ブラック企業の代名詞であるはずのスルガシステムでまさかの社員旅行企画が持ち上がる。しかし、普通に社員旅行ができるはずもなく……。

サイジングの仕事を頼まれた。期日はとりあえず ”ASAP” と馬鹿の一つ覚えのように繰り返す社長……。地獄の始まりだった。

そんなエピソード二つと優秀すぎる新入社員次郎丸の日常を描いた短編と、工兵の妹・誉の活躍を描いた短編を交えた短編集。

感想などなど

さて、ブラック企業の日常物語の幕開けである。あらすじでも示した四つの短編が収録されているわけだが、どれもこれもぶっ飛んでいて面白い。

まず一つ目はタイトルにもなっているブラック企業の社員旅行を描いた「闘う? 社員旅行」から。社員旅行と言えば、その間だけは仕事のことを忘れ、すさんだ体と心を癒やすため、あまり関わることのなかった社員と関わりを持つための場でしょう。

決して心がすさんでいく地獄ではありません。そうあるべきではないはずなのです。

まぁ、このスルガシステムはその常識が通用しませんが。それはこれまでの話を読んできたならば、分かって貰えるでしょう。夕飯時に舞い込んでくる顧客からの電話の数々。想像して下さい。みんなが楽しく食事をしている中、次々と罹ってくる着信音。電話に出て青ざめる人が慌てて外に駆けていく面々。自分だけには来ないと思っていた人の携帯にやって来る着信。

地獄絵図です。そして、何故だか電話の来ない工兵。「電話が来るのは自己管理ができていないからだ」と機嫌の悪くなる社長を前に、工兵は何ができるのか?

怖い話です。もうこれは一種のホラーです。呪われているんじゃないでしょうか?

 

怖い話は一段落。そして、また怖い話です。

皆さんは ”ASAP” というものをご存じでしょうか。このラノベもそれなりに古いので、今となっては死語となっているかも知れませんが。

どうやら「as soon as possible」の頭文字を取った言葉で、「可能な限り早く」と言った意味だそうです。

使用例

SE「この仕事、期限はいつまでですか?」

顧客「ASSP!」

といった感じでしょうか? いやいや、待て待て。「可能な限り早く」と言われても、こちらとしても準備や仕事の振り分けなどなど、期限を聞いた上ででしかできないことがあるではないか、と。

そんな現場の人の悲痛な声が、このスルガシステムの社長の耳には届くことがありません。

ちなみに頼まれた仕事はサイジング。簡単に言えば見積もりのようなもので、「こんなものを作りたいんだけど、何と何が必要で、どれくらいの費用が最大でかかるのだろう?」といったことを調査してまとめる仕事です。

簡単そうに聞こえるかもしれませんが、今回は相手が悪かった。SEだけには手が終えず、OS部の人達の応援がなければ手が付けられない内容だったのです。

そこで満を持して登場、姪浜梢さん。彼女が(工兵はともかく)立華と仲良くできるはずもありません。

そんなゴタゴタに追随するかのように、社長の追加のお仕事。読んでいるだけで胃が痛くなりそうな状況が続いていきます。

これまで何とか首の皮一枚で対処してきた工兵が、唯一負けた試合かもしれません……。

 

さて残り二つは打って変わって、癒やし……なのでしょうか。

工兵もといスルガシステムを追い込んだ敏腕新人・次郎丸に舞い込むインタビューのお願い。これまでも彼女の凄さは語られてきましたが、改めて「あぁ、やっぱりすごいんだなぁ」と思わずにはいられません。怖すぎます。これもある種のホラーかもしれません。

こんな新人が同期でいたら、頼りになる反面、自分との格差に鬱になってしまう気がします。

そんなホラーを経て、工兵の妹・誉が登場する癒やし回……と思っている時期がありました。社会人ならよくやらかしそうなリアリティのある話です。まぁ、どんなに疲れていようとも手続きはしっかりと確認しながら行いましょうという話です。

 

……うぅ、これは新手のホラーです。自分の身に降りかかったら発狂して逃げ出す自信があります。しかも、超ハイスペックな工兵と立華、カモメさんがいながら対処には余裕が一つもないというのも、これまた恐怖を駆り立てます。

可愛らしい絵柄と相反する物語。社長はそろそろ殺されても文句を言えない気がしてきました。

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