工大生のメモ帳

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なれる!SE13 徹底指南?新人研修 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

頼れる上司とは

情報

作者:夏海公司

イラスト:Ixy

ざっくりあらすじ

新人が入社し、その研修を何故か担当することになった桜坂工兵。採用された新卒はなんと十人。それぞれ一癖も二癖もある人材ばかりであって……

感想などなど

文系からSEになった桜坂工兵の活躍というものをこれまで見てきた。もうすっかりサーバやネットワークに関しては詳しくなってしまって、新人とは思えないような活躍ぶりを見せてくれる。それもこれも彼の努力と才能がなせる技であろう。

正直、こんな新人が同期だったら自己嫌悪に苛まれてしまう気がする。いきなり客先で大した経験値もないままに突っ込んでいって成功をもぎ取れるような輩が蔓延る世の中ならば、社会はもう少し上手く回っていく。

残念ながら、この社会には有能がいれば相対的に無能がいる。スルガシステムは(社長を除いて)有能すぎる化け物揃いではあるが、後輩を育てるということを考えると有能とは言い難い。

室見立華とのファーストコンタクトである第一巻を思い出して欲しい。最低な出会いと、最悪な業務を、劣悪な環境でこなすエピソードであった。今となっては思い出のように美談として語れるかもしれないが、よく考えずともブラック企業のブラック体験談にしかならない。

しかし一年の経験で室見立華も成長した。OJTとして放置と矢継ぎ早に責め立てる言葉の応酬は(あまり)しなくなっている。丸くなったということなのだろうか。

 

とりあえず室見立華のやり方は桜坂工兵には通用したが、それ以外の人材に通るかと言われれば百人中百人が首を横に振るだろう。研修で毎日のように残業というのは御免被りたいだろうし、研修内容に追いつけずに精神的に病んでドロップアウトしてしまう人というのも珍しくない。

だとすると、正しい新人研修というのはどのようにすれば良いのだろうか。

桜坂工兵は今回はそのことと向き合い考えていくことになる。あとがきを読むに、作者もエンジニアとして新人教育を行っていた経験があるらしく、それが生かされているエピソードだと言えるだろう。

事実、「あぁ、確かに慣れないよなぁ」と思うような業務や、「そういう人もいるよねぇ」と感慨にふけってしまうようなキャラクターが多数登場する。ラノベの対象年齢は高校生だと思っていたが本シリーズには適用されないのではないだろうか。社会人になってみないと理解できないような話が描かれていく。

 

例えば。

どの会社でも大差ないと思うが、その日の研修でやったことをまとめて担当者に送る日報というものがある。研修でいざ学んだことをまとめてみると、分からない所と分かる所が整理できて役に立つ。今後の業務において、自分がした仕事を報告する上での練習にもなる。

「日報なんて書く意味ないやんけ!」と思っていても、実際はたくさんの意味があるのだ。「何を書けばいいか分からない」というのは誰もがぶち当たる壁だと思うが、それを「分からない」ということを質問することも大事だったりするし、下手なことを書いた場合は駄目だと言ってくれるだろう。

特にスルガシステムの場合、文系であろうが問答無用でエンジニアとして採用する。研修において分からない箇所がないという方がおかしい。

まぁ、とは言っても。文章を書くだけなのだから何も難しいことはない。指定された文量にもよるだろうが、色々過剰に多めに見積もっても二十分くらいではないだろうか。当然、研修とは言え給料の発生する業務であるため、手を抜かないというのは大前提だ。書かないなんていうのは問題外である。

……と思っているのはブログ主だけであった。

「書いても書かなくてもいいんだ」と判断した新人がいた。

日報を書くように指示を飛ばしたのは桜坂工兵である。彼の言葉を見返してみると「各自日報を書いてみてください」「こちらの宛先に送って下されば僕からは必ずレスするようにしますので」というように日報のことを説明している。「書いてみてください」という言葉を「書かなくてもいいんだ!」というように脳内変換したのだろう。日本語って難しい。

「何を書けばいいか分からない」と思っている新人がいた。

桜坂工兵は「フォーマットは任せますので」「今日の研修・業務内容を報告してください」というように日報について説明している。フォーマットを任せると言われると、ブログ主はテキストファイルにするか、エクセルファイルにするか、メールに打ち込むかなど案を上げ、配布されるであろうパソコンに入っているソフトと相談して最終的に決める。

内容に関して分からなければ質問すれば良い。幸い同期もいるのだし、真似ても悪いことではない。結果として分からなかった新人は、送らないという選択肢をとったようだが、それは一番最悪の選択だったと言わざるを得ない。

 

上記のエピソードは可愛らしいもので、その他たくさんのミスを新人はする。それに対して上司は怒るが、その怒りはミスをしたことではなく、ミスを報告しなかったことに対する怒りがほとんどであった。

大学時代というのはミスをした……例えばレポートを提出しなかったというような場合、損をするのは大学生本人だけであった。教授としては、別にないならないで単位を出さないだけで終了。冷めた関係性である。

しかし仕事では同僚とお客様がいる。報告・連絡・相談の報連相は、使い古されているが使い古されるだけの理由があるのだ。

第十三巻は普通に無難にためになるエピソードだった気がする。ラノベだからといって誇張されている訳ではないエピソードが連なっていくというのが、社会人の心に響いてしまった……ブログ主のような人は多いと思いたい。

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