工大生のメモ帳

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なれる!SE14 世にも奇妙な?ビジネスアライアンス 感想

【前:第十三巻】【第一巻】【次:第十五巻】
作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

ビジネスの匂いがします

情報

作者:夏海公司

イラスト:Ixy

ざっくりあらすじ

アルマダ・次郎丸と、JT&W・梅林がまさかの共闘⁉ 表題にもなっている「世にも奇妙な?ビジネスアライアンス」

扶桑建設のエンジニアである薬院加奈子は、大学時代の同級生から合コンに誘われて……「ガテン系?女子の幸せ獲得術」

社長が仕事に参加すると言い出して、無事に仕事が進行するはずもなく……「社長が働く?日」

酒酒酒の毎日に、いつの間にか太ってしまっていた桜坂工兵は立華に相談する。「立華ズ・ブートキャンプ」

感想などなど

第十四巻は短編集である。まさかのJT&Wの梅林視点に始まり、薬院加奈子が合コンに行く話が挟まり、誰も逆らえない面倒ごとを増やすことが得意な社長がさらに面倒ごとを増やしていく頭が痛くなりそうな話に、ダイエット話に至るまで種類も多種多様。とりあえず一つずつ見ていきたい。

 

「世にも奇妙な?ビジネスアライアンス」

表題作。なんとJT&Wの梅林視点である。彼は桜坂工兵やアルマダの次郎丸に散々な目にあった可哀そうな人である。詳細については第八巻を参照。

彼の仕事は営業のようなものだ。「○○をしたい」という企業に対して、それを実現するために自社ができる業務内容をプレゼンする。そのためには企業が求めているポイントを押さえ理解し、それに応えられるような業務にしなければならず、金銭的問題や締め切りや信用の問題など、多くのことを理解していなければ取り組めない。

つまりは有能でなければ不可能な業務だと言える。

そんな業務に、JT&Wという大企業で務めている梅林はかなり有能であると言えよう。まぁ、桜坂工兵や次郎丸に敗北を期したという事実は、それでも覆らないが。今回はそんな彼がすっかり会社内での地位が落ち込んでしまい、どうでもいいような業務を回された先での出来事である。

いや、どうでもいいというのは失言か。といっても作中の梅林がそんなことを言うのだから許して欲しい。

業務内容を簡単に説明すると、会議のアドバイザー的な役割である。へぇ、こんなこともするんだな……頼りにされたりして大変そう……色々な想像を抱くことだろう。実態はそれはそれは酷い。

まず会議とはいったものの会議としては内容があまりになさすぎる。どうやら社内インフラに関して問題を出してもらい、それに対して問題点の分類や改善点の洗い出しをするという目的で開かれた会議であるらしい。だが出される問題点はどれも基礎的なことばかり(逆に言えば基礎的なことすらできていないともとれるが)、それに応えるインフラ担当は「持ち帰って検討します」というばかり。

議事録? いやいや、誰もそんなものはとらない。とったとしても薄い内容で、しかも毎回変化しないという徹底ぶり。社会を腐らせるのは、こういった腐った会議だと思う。

梅林はうんざりしていた。意味のない会議にアドバイスなどしようがない。たまに口を出そうものなら「何言ってんだこいつ」みたいな目で見られる。誰も真面目に会議をする気がないことは明白だった。

その会議に現れるまさかのアルマダ・次郎丸。彼女とともに「この会議はどうして腐っているのか」を調べることになってしまった。次郎丸曰く腐った会議の裏側から「ビジネスの匂いがする」というが……。

本作は短編としての完成度がとても高い。「腐った会議」という一見すると調べる価値すらないと思われる風景から、予想外の事実を見つけ出していく感じはミステリ的である。最後にはそれをビジネスとして金に換えてしまうのだから恐ろしい。

 

「ガテン系?女子の幸せ獲得術」

これまで桜坂工兵は仕事の度にハーレム要因を増やしていった。しかし薬院加奈子だけはどこか男に興味なさげな感じがして、ハーレムに加わってきそうで加わってこなかった。工兵に対する感情というのは、どちらかと言えば尊敬に近いだろう。しかも立華との関係性を勘違いしている節もある。

そんな薬院加奈子が合コンへと向かう。彼女としてはあまり気が乗らないようだったが、いまだ彼氏すらできたことがないという彼女がこのまま仕事に打ち込み続けていては不味い。そう考えた友人たちは画策し、合コンを企画。

ズボンしか持っていなかった彼女にスカートを買わせ、言葉遣いや振る舞いも合コンで戦えるように教育を施した。その結果、めちゃくちゃ可愛いボーイッシュな女の子が完成したのだから、友人たちを褒めたたえるべきだろう。

しかしだからといって楽しめるかと言えば話は別だ。合コン特有のノリというのは、キツイ人間にとっては本当に辛い。いつも冷えたビールを流し込む加奈子にとって、それができない環境というのはどうにも合わないらしい。

彼女が一緒に過ごして楽しいと思えるような相手というのは、きっと――。

 

「社長が働く?日」

無能な見方が一番怖い。しかもそれが社長だともっと怖い。

 

「立華ズ・ブートキャンプ」

あのような環境で太るというのが想像できないが、毎日のように色々な人と飲みに行っているらしい桜坂工兵。ビール一本でご飯一杯分という衝撃の話に、ブログ主も驚きつつダイエットを決意した桜坂工兵(とブログ主)。

オチは完全に予想外だった。立華はやはり人間離れしていたんだなぁ……まぁ、あの仕事量と技術を身に付けるためには何かしらを犠牲に……いや、これは犠牲にしているのか? むしろこうならなければならないように彼女は人間として進化を遂げたのかもしれない。

彼女にできることは、誰にもできるなんて考えてはいけないのだ。

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