※ネタバレをしないように書いています。
超大作
情報
監督:S・S・ラージャマウリ
脚本:ラージャマウリとV・ヴィジャエーンドラ・プラサード
主演:菅田将暉、有村架純
ざっくりあらすじ
圧政を強いられて苦しんでいたインドの人々。その中には、連れ去られていった妹を助けるために準備を進める男や、圧政を強いてくる者達に忠誠を誓い、上の地位を虎視眈々と狙っている男もいた。彼らの運命はいかに⁉
感想などなど
実はブログ主が初めて見たインド映画が本作だった。
本映画を見る前は、インド映画に対するイメージは、「とにかく歌って踊ってるんだろう」という今思うと偏見が酷かった。イギリスの植民地だったインドの歴史についても詳しくないし、他で見たインド映画は『炎』しかない。最近まで『スラムドッグ$ミリオネア』はインド映画だと誤解していたくらいに学も知識もない。
『RRR』は当時話題になる前に映画館で見てとても感動して、映画館で二回見たくらいには好きだ。だが、この映画の魅力を語るには自分には力不足だと思っていた。とはいえ、数年が経過して、未だに見るくらいには好きなので、結局は感想を書くに至る。
本作はテレビでもネットでも、かなり話題になった。三時間という長尺の映画でありながら、多くの人が見てその面白さを語っている。どんな映画だとしても賛否両論あるものだが、本作に否の意見を述べている者は見たことがない(長すぎる、くらいか)。
そんな本作の魅力は何なのだろうと、自分なりに考えてみた。
そもそも本作はストーリーの評価が高い。しかし本作を見た人はちょっと思い返して見て欲しい。二人主人公であるために視点が行ったり来たりするし、未来と過去と時系列も動くし、登場人物もかなり多い。三時間という長尺な映画だということを加味しても、かなり複雑なストーリーになっていると思う。
それなのに内容がスッと頭に入ってくる。それはどうしてなのだろうか?
本作は大きく二部構成になっている。大雑把に第一部は主人公の一人・ビームの物語、二部はビームの友人にして主人公の一人・ラーマの物語だ。それらの物語を分からせるために、会話などの「うっかり聞き逃したら分からなくなる情報」としてではなく、インパクトあるシーンを繋げることで読者に知らしめてくる。
例えば。
映画の導入であるプロローグは、森の奥にある村に圧政を敷く提督の家族が訪れて、たまたま絵が上手だった娘が連れていかれる。その際、小銭をその娘の親達に握らせ、親達の合意もなく "購入" し、抵抗した者は銃の弾丸がもったいないという理由で、そこらへんに落ちていた木の棒で殴打するという衝撃的なシーンが連続して、テンポよく描かれる。
はっきりと説明はないが、提督達にとってインドの原住民はそのような扱いが当たり前であるということが良く分かる。そんな提督達に対して、インドに住む人々が不満を抱くというのは良く分かる。
例えば。
そんな衝撃的な冒頭とは裏腹に、提督達……つまりはイギリス人の上司に忠誠を誓い、無理難題を成し遂げていくインド人が登場する。彼こそが本作におけるダブル主人公の内の一人、ラーマである。
ラーマはインド人が起こした反乱をたった一人で沈める。このシーンは圧巻だ。事務所?らしき場所を取り囲む膨大な数のインド人たちを相手取って大立ち回りを繰り広げ、血だらけのボロボロになりながらも未だ立ち続ける。ここで大事なのは彼もまたインド人であり、相手取っている反乱を起こしたインド人達はどちらかといえば仲間であるはず……この引っ掛かりはその後もずっと描かれ続ける。
例えば。
提督に忠誠を誓ったラーマとは違い、ダブル主人公の二人目であるビームは、冒頭で連れ去られた娘を救い出すために綿密な計画を立てて準備を推し進めていた。そんな彼の初登場シーンは、森の中で虎から逃げながら罠へと誘い込み、捕獲するというシーンだ。これもまたラーマとは違うベクトルの強さを象徴するシーンであり、ここで虎を捕獲していた意味も、後々になって分かってくる。
ここまでシーンを列挙してきて、それぞれ記憶に残るインパクトあるシーンとなっていることが伝わっただろうか。しかし、それぞれに伏線があり、意図があり、後々になって繋がってくる。これがとても気持ちいい映画なのだと思う。
この映画は2回、3回と繰り返しみたくなる映画だ。3時間という長尺の中に、詰め込まれたインパクトあるシーンの数々を1回目は楽しみ、それらの繋がりや意図が見えてくる快感は2回目や3回目の方が大きい。
見れば見るほど新しい発見があるし、何度見ても面白い。
何よりも記憶に残る超大作であった。