工大生のメモ帳

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【漫画】SPY×FAMILY1 感想

【前:な し】【第一巻】【次:第二巻

※ネタバレをしないように書いています。

それぞれ秘密を抱えてる

情報

作者:遠藤達哉

試し読み:SPY×FAMILY 1

ざっくりあらすじ

名門校潜入を命じられた凄腕スパイ《黄昏》は、さっそく家族を作り始めるが、孤児院でもらって来た少女が心を読むことができる能力者で、妻は最強の暗殺者だった!? 互いに正体を隠しながら、受験と世界の危機に立ち向かっていく。

感想などなど

平和は戦争をしない期間に過ぎないと良く言われる。

そもそも平和と言っていても、地球のどこかでは大小様々な戦争が起きている。戦争をするだけの武器と理由は、地球のどこにでも転がっているのだから、それに巻き込まれたと文句を言っている間に殺されるのがオチだ。

そんな仮染めの平和の裏で、凄腕スパイとして働いている男――コードネームは《黄昏》。百の顔と声を使い分け、あらゆる任務をこなして来た。そんな彼の次の任務は『国家統一党総裁ドノバン・デスモンズに近づいて不穏な動きを探ること』、そのために結婚して子供をこさえるように上層部からの命を受ける。

……どうやらこのドノバンとかいう男は引き籠もりで用心深く、息子が通う名門校で定期的に開かれる懇親会にしか姿を現さないらしい。そこで何とかして彼に近づき、情報を探るために、名門校に通う子供と、怪しまれない妻が必要ということだ。

そのために子供をこさえる期限は七日。人間は七日で妊娠から出産、学校に進学するまでの年齢に成長することはできない。当たり前である。

しかし彼はこの任務を達成する――この世界の平和のために。

そんな彼の次の顔はロイド・フォージャー。職業は精神科医。スパイファミリーはここから始まる。

 

さて、そんなロイド・フォージャーの家族を紹介しよう。

まず一人娘のアーニャ。六歳(自称)。ずっと前から父の子供であり(自称)、好きな食べ物はピーナッツ。嫌いな食べ物は人参。どこからどう見ても普通の子供――ではない。

彼女は人の心を読むことができるエスパーである。ロイドの心を読み、彼がスパイであるということを知った彼女。アニメ「スパイ大作戦」が好きな彼女は、彼の下でわくわく一杯の生活を送れるという期待を胸に、何とかしてロイドに気に入られるように動き、そして実際に彼に引き取られた。

そして妻ヨル。美人だが、どこか抜けたところがあり、家事は片付けしかできない。両親はともに他界しており、年の離れた弟が一人いる。いたってどこにでもいる普通の女性――ではない。

コードネーム《いばら姫》、彼女は殺し屋である。幼少期から殺しの依頼をこなし、その技術は一級品。ロイドは任務のためであるが、彼女はこれからも殺し屋として生きていくために、彼と婚姻を結ぶことにした。

互いに隠し事をした歪な家族、しかし世界もまた、互いに隠し事をした歪な形で回っているのかもしれない。

 

殺し屋、スパイ、エスパー。それぞれの属性が、それぞれ違った視点と価値観で行動することによるズレが面白く、ズレているのに家族としてのまとまりができていく過程が先を読みたいという興味に繋がっていくように感じる。

例えば。

家族三人で出かけると、ひったくり事件に遭遇する。その犯人を猛スピードで追跡していくヨルさん。流石は殺し屋、気迫と身体能力が人間離れしている。しかし追跡に関しては専門外。ここでエスパーとスパイの出番である。二人によってひったくり犯は捕まり、事件は一件落着。町は一つ平和へと近づいた。

この三人だからこそひったくり犯は捕まえることができたと言えよう。別に話し合って連携を組んだ訳ではないのに、上手い具合に形になっている。これぞ家族と言うべきなのかもしれない。

どんなに歪だとしても、そんな三人の家族としての姿が続いて欲しい。しかし、ロイドの任務が終われば家族は必要なくなる。その家族の終幕は世界の平和に繋がるのだろうか。これから先もこの家族の生活を見ていきたい……そう切に願ってしまう作品であった。

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