※ネタバレをしないように書いています。
それぞれ秘密を抱えてる
情報
作者:遠藤達哉
試し読み:SPY×FAMILY 4
ざっくりあらすじ
アーニャが星を貰ったことを祝うため、彼女が欲しがっていた犬を飼うことに。その買い物に街に出たフォージャー家一行だったが、爆弾犬を使って西国大臣暗殺の計画が進められていることが判明。黄昏はテロを止めるべく作戦に加わることに。
感想などなど
第一次世界大戦は、ある国に皇太子が暗殺されたサラエボ事件がきっかけになっている。歴史の教科書で聞いたことくらいはあるのではないだろうか。
戦争は何がきっかけで引き起こされるか分からない。たった一発の銃弾が、世界大戦に繋がるものなのだ。黄昏は、そんな戦争を止めるためにスパイになった。そのためにはテロというような戦争の因子を、徹底的に排除していくという修羅の道を歩んでいくしかない。
そんなテロの因子が、アーニャの欲しがっている犬を飼いに行っている最中で見つかった。なんと大臣を爆弾犬を使って殺害するという計画が、秘密裏に進行していたというのだ。
家族サービス中ではあったが、テロを止めるために行動を開始する黄昏。そのことを察して、大人しく母と一緒に犬を見に行くアーニャ。何も知らないまま、アーニャを一人見失わないように周囲を警戒するヨル。
端から見ると、母と娘の二人で犬を見て回る幸せな光景に見えるだろう。その実態は、父親はトイレに駆け込んでいると見せかけて、テロ集団を追いかけている。アーニャは世界の危機であるということを察しつつ、どこかワクワクしていた。
そんな家族の前を通りかかる一匹の犬。その犬の思考をたまたま読み取ったアーニャは驚愕する。なんとその犬が、アーニャとロイドとヨルの三人のことを思い浮かべていたのだ。
そもそも犬が人の顔を思い浮かべるという時点で驚きなのだが、アーニャとヨルは勿論のこと、ロイドだってその犬との面識はない。それなのにどうして、この犬は三人のことを知っているのだろうか?
そのことが気になって仕方がない一つ星アーニャは、ヨルの目をかいくぐって犬を追って街に繰り出した。まさかその犬が、爆弾犬を使ってテロを目論むグループが飼っている犬だとは知らずに――。
こうして超能力者アーニャもテロ事件に関わっていく。そんな大事な娘アーニャを追って、普通の母親を自称する最強の殺し屋・ヨルさんも乱入していくることになるのだが、それは一先ず置いておこう。
この第四巻は、そんなテロ事件に巻き込まれる話だ。それぞれの立場が絶妙なすれ違いを見せつつ、上手い具合に歯車が噛み合うように事件が解決へと動いていく。アーニャは犬の思考を垣間見て、その犬が未来予知できることを悟り、ロイドが死ぬ未来を回避するために行動する。
子供であるが故に「時計が読めない」「絵が下手」「字が下手」というような諸問題を抱えつつも、そんな彼女のメッセージを受けとったロイドが奇跡的な回避能力を見せつけてくれる。ロイドはそのメッセージの送り主がアーニャだと気付くことはないだろうが、それでも全く問題は無い。互いにバレてはいけない関係性なのだから。
ロイドはロイドで、変身能力・身体能力・洞察力を駆使して問題解決のために動く。それが実は死んでもおかしくない危ない橋を渡っていたことは、アーニャ視点で良く分かるが、ロイドが命の危険に晒されることはいつものことだった。
ヨルさんは……母親は強いってことを教えてくれた。流石は毒を食べても無効化する人間である。本当は人間じゃないのかもしれない。
平和の裏には、ロイドとアーニャとヨルさんの行動が繋がっていくような、歯車が噛み合うようにカチッと嵌まる奇蹟があるのかもしれない。
最後、事件が一段落して一家が集合するシーンが個人的には好きだ。歯車の終着点は家族の幸せに繋がっているべきだと思う。綺麗にまとまった第四巻でした。