※ネタバレをしないように書いています。
それぞれ秘密を抱えてる
情報
作者:遠藤達哉
試し読み:SPY×FAMILY 5
ざっくりあらすじ
家族に予知のできる犬ポンドが加わり、順調に作戦は進行しているかに見えた――しかし、中間考査がアーニャに迫る。果たして赤点は無事に回避できるのか!?
感想などなど
平和だ……爆破テロの話がなかったかのように。事実、東西の情勢を鑑みてテロが計画されていたことは公表されない。エージェント《黄昏》の活躍も、アーニャが必至になったことも表舞台に出てくることはないのだ。
あのテロにおける被害者だった予知犬は、ボンドという名前を与えられ、フォージャー家にやって来ることとなる。これから先、いつまで続くか分からない家族ではあるが、平和を謳歌してもらいたいものだ。
この第五巻は本当に平和な日常が描かれていく。
例えば。
殺し屋ヨルが料理の練習を、市役所の同僚宅でお願いするエピソードから始まっていく。ヨルの料理はそれはそれは酷いもので、食べ物から毒物を生成する新手の暗殺術を思わせる。しかしヨルは本気で美味しいものを作ろうとしてそうなるのだから、これは天性の才という奴なのだろう。
このままではいけない! と料理を学ぶために努力するヨル。毎日の帰宅が遅くなり、指は包丁で傷だらけになりながらではあるが、まな板を包丁で切らないように、食材を細かくみじん切りし過ぎないように、毒物を生成しないようになってきた。涙ぐましい努力の成果は、家族を喜ばせることはできるのだろうか。
偽装家族の関係性が壊れないように努力する姿は、甲斐甲斐しい妻そのものである。平和だ……この裏で何人殺してるのか知らんけれども。
そして平和な戦争が始まる。そう、中間考査である。
中間考査は四教科のテストが出され、それぞれ赤点を取ると雷というサッカーでいうところのレッドカードが出される。この雷が八つ溜まると退学(入学してすぐに次男を殴ったことで、既に雷は一つ溜まっている)。つまりは作戦失敗、家庭崩壊である。
しかしアーニャは超能力者。心を読めば満点も夢ではない。
そんなスーパーエージェント・アーニャにも弱点があった。なんと新月の日には能力が使えなくなってしまう。その新月とテストの日付が被ってしまったのだ。これは本気でテスト勉強をしないと世界が危ない。
ということでアーニャの勉強の日々が始まる――と察しの言い方は分かるかもしれない。アーニャは勉強が大嫌いである。そんな彼女が普通に勉強をするだろうか? いや、しない。
そんな彼女のやる気を引き出してやらなければ、後々の学園生活で苦労することになる。そこで白羽の矢がたったのが、ヨルの弟・ユーリであった。彼に勉強を指導されることになるが、アーニャの勉強の行方は如何に……これでも国の平和が懸かっているんだよなぁ。頑張ってくれアーニャと応援したくなるようなエピソードであった。
この第五巻では新キャラが登場する。彼女はエージェント《夜帷》、《黄昏》の後輩スパイであり、毒婦・冷徹・鉄面皮と散々な言われようをされている。味方の背中も刺しかねないくらいに、何をするか分からない危険な人物である。
そんな彼女が《黄昏》のいない、ヨルさんしかいない家に足を運んだ。その理由は、ロイドの妻役であるヨルの失脚……自ら手を下すのはリスクが高すぎるため、彼女の意思で家を出て貰うために、言葉を選んでいく。
彼女の登場で平和だった家庭に、少しばかりのヒビが入ることとなる。彼女の登場がこれから先の物語にどのような展開を生んでいくのか? 期待せずにはいられない。