工大生のメモ帳

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【漫画】SPY×FAMILY6 感想

【前:第五巻】【第一巻】【次:第七巻

※ネタバレをしないように書いています。

それぞれ秘密を抱えてる

情報

作者:遠藤達哉

試し読み:SPY×FAMILY 6

ざっくりあらすじ

戦争の火種になりかねない機密文書を回収するため、地下テニス大会に参戦することとなった夜帷と黄昏。地下というだけあって、ドーピング・肉体改造・工作なんでもありのテニスに、身体一つで挑む二人は勝ち上がることができるのか?

感想などなど

黄昏が今、メインで進めているミッションは、イーデン校に娘を通わせ、デスモンドに近づいて状況を探るオペレーション〈梟〉だ。しかし、かつての爆破テロ事件のように様々なミッションにも狩り出されている。彼の変装技術の高さや、上司からの信頼の高さが良く分かる。

そんな黄昏は、黄昏大好きな後輩・夜帷とペアを組んで地下テニス大会へと潜入した。目的は戦争の火種になるとして隠された機密文書……の隠し場所が記されたとされる絵画「日向の貴婦人」の回収である。

絵画の回収とテニス大会が結びつかないかもしれない。

実はそのテニス大会が開催している人物が、古美術の収集家として名を馳せる資産家キャビー・キャンベルという男であり、彼こそが狙っている絵画「日向の貴婦人」の所有者なのだ。そしてこの彼主催のテニス大会で優勝した際には、彼の持っている芸術品の一つを貰えるというのだから、潜入という危険を冒すよりも、テニス大会で順当に優勝した方が良いという判断である(しかも隠し場所が絵画に記されているという情報を、まだ黄昏達しか掴んでいないという背景もある)。

まぁ、黄昏と夜帷は身体能力が人外じみている。その異常さは、このテニス大会……ならぬテニヌ大会でまざまざと見せつけられる。なにせドーピングや工作なんでもありなの中、何も工作せずに身体一つで挑み、勝ちを積み重ねていくのだから。

初戦の相手はかつてのテニスプロ――なにも危なげなく勝利。次の相手はドーピングで筋肉マッチョになった男達――彼らの力を力でねじ伏せる。あくまで一般人を装ってるつもりらしいが、薬漬けにされた筋肉を筋肉でねじ伏せる一般人がいていいはずがない。

勝ち進めると敵の工作は苛烈を極める。部屋に毒物を散布、試合中にスナイパーに撃たれる、地面が凹む、審判が攻撃してくる……スパイって大変なんだなということを教えてくれる。

そして見逃してはいけないのは、夜帷の心の声が常に黄昏ラブということだ。黄昏に自分を見て欲しいという乙女心は可愛らしいものだが、端から見ると、黄昏を睨みつつ敵をボコボコにしていくホラーの絵面だ。そんな変な後輩であっても、心配してくれる先輩の優しさが、さらに夜帷を狂わせていく。

何だかんだで生き残りそうな強い乙女であった。

 

そんな夜帷以上に強い女性が、黄昏の妻・ヨルさんである。家事で人を殺せる彼女の乙女な一面が、この第六巻では垣間見える。夜帷と黄昏との関係性を邪推して、自分との関係性を断たれてしまうのではと危惧し、何とかして黄昏の気持ちを聞き出そうするのだ。

ただ彼女は、会話よりも拷問が得意な殺し屋だった。ヨルさんとの円満な関係を目指す黄昏との利害関係は一致しているはずなのに、どうにもすれ違いが起き、痴話喧嘩らしき何かで死人が出る一歩手前まで行く。というか黄昏以外なら死んでいた。

そんなチグハグに見える展開から、ヨルさんを選んで良かったと思えるようなシーンが待っているとは……いい話だなぁ、と素直に拍手を贈っておこう。アーニャの父と母が好きという台詞の重みが、一読者として好きである。

 

そしてオペレーション〈梟〉におけるメインイベント、懇親会が行われるのも第六巻だ。とはいっても、黄昏としては今回で攻め過ぎることはないように、顔見せ程度できれば良いというような温度感だ。

なにせアーニャは優秀な生徒ではない(悲しいが)。星八個集めることが、懇親会に出席する最低条件となっている以上、ここで関係を持とうと無理することは警戒されることに繋がるかもしれない。

しかし、そこは超優秀なロイド――華麗な作戦を決めていく。スパイだけが感じるひりついた空気が、そこには描かれていた。

あっという間に読み終えてしまう濃い内容の第六巻であった。

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