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【漫画】SPY×FAMILY7 感想

【前:第六巻】【第一巻】【次:第八巻

※ネタバレをしないように書いています。

それぞれ秘密を抱えてる

情報

作者:遠藤達哉

試し読み:SPY×FAMILY 7

ざっくりあらすじ

黄昏は標的である国家統一党総裁ドノバン・デスモンズと接触を果たす。そこで腹の内を探ろうと会話を広げようとするが……。

感想などなど

戦争を起こすのは人間である。

戦争を好き好んで起こそうとする人間なんていないという性善説を唱える者もいるかもしれない。もしもその性善説が正しいとしても、戦争は些細なきっかけで起こるということは歴史が証明している。

デスモンドは戦争を起こそうと計画しているのではないか、と考えられている幹部の一人だ。彼に近づき、不穏な動きを探るというのがロイド・フォージャーの任務であり、そのためにアーニャに星を稼がせる必要があった。

そんな標的であるデスモンドが、どうやら学園に顔を出したらしい。その目的は次男・ダミアンに会うため。国家第一党の総裁というだけあって、彼の身辺を固めるSPの数はかなりのものな上。おそらく学園にいる時間も限られる。

そんな中、デスモンドに近づくべく動き出した黄昏。自然に、疑われない形で近づくロイドのスパイとしての手腕は、さすがと言わざるを得ない。ダミアンと親子水入らずのところに迷い込んだかのような流れで、かつてダミアンをぶん殴った娘の謝罪をしつつ、ダミアンを娘経由で聞いた話で褒めつつ、どうにかデスモンドの心に取り入れようとする。

しかし、ラスボスのような風格すらあるデスモンドの対応は冷たい。

[血が繋がっていようとも結局は他人」「理解しようと努めるだけ無駄」……息子に対してですら、このような考え方で接するデスモンドが、真っ赤の他人である隣国にどのような考えを抱いているかは推して知るべし。

対するロイドは、子供に対しては理解しようと歩み寄ることが大事だと語った。これまで何を考えているか分からないアーニャに、彼なりに最大限の歩み寄りをして接してきた苦労が見える言葉の重みが、デスモンドに通じたかは定かではない。

冷酷な言葉ばかり吐いているように思えたデスモンドが、最後に息子に対して見せた優しさが、ダミアンの不安をどれほど和らげたか。父親としてどれほど尊敬されているか。それを彼は理解しているのだろうか。

今回は顔見せしただけに過ぎない。デスモンドの動きを探るにはまだ遠いが、これは大きな一歩だったということに異論はないであろう。

 

この第七巻では、ロイド家以外の登場人物達に焦点を集めた掌編のような内容になっている。

第一幕は新たに星を獲得し、父親に認めて貰うべく、毎日のように勉学に勤しむダミアンの休日の過ごし方。エレガントなヘンダーソン先生や、ダミアンの取り巻き達との友情。政治家になってよりよい国にしたいという夢など、ダミアンという人間の人となりに触れるエピソードとなっている。

第二幕はロイド家の犬ボンドが、自らが死ぬ未来を予知してしまい、それを回避すべく行動する物語。ちなみに予言で見たボンドの死因は『母ヨルの作った餌を食べたことによる食中毒』。回避のためには父ロイドに餌を作って貰わなければ……と匂いを辿り、絶賛任務に臨んでいたロイドに飯を作って欲しいと懇願する。言葉を話せる訳ではないので、いつの間にか一緒に任務に挑んでいることになっていくが……終わり良ければ全て良し!

第三幕はシスコンの秘密警察・ユーリの仕事風景。盗撮、尾行、監視といった人権を無視した捜査で、国に反旗を翻すような輩を逮捕し粛正する仕事だ。彼が今回狙っているのは国を売るような内容の記事を敵国に流している男で、記事をいかにして敵国に流していたのかが不明だった。短いながらしっとりとまとまったエピソードとなっている。

第四幕はほっこり回。イーデン校七不思議の一つ、食べれば頭が良くなるという菓子「知恵の甘味」が、数量限定で食堂に並べられたという話を聞き、何とかして食べたいアーニャでデスモンド達が、ババ抜きで競い合うというものだ。デスモンドとアーニャの可愛さが詰まった内容となっている。

第五幕は気になっている女性の飼っていた猫がいなくなったということで、自らの情報網を駆使して探し出そうとする情報屋の話。途中から探索に加わったヨルさん回といえなくもない。いつか情報屋にぴったりの女性が現れることを願わずにはいられない物語であった。

 

ロイドの任務に関する進展はなく、結果だけを見ると中弛みと言えるかもしれない。だが読んでいる時はそんなこと気にならず、SPY×FAMILYの世界観に対する理解が深まる内容となっている。

次回からはアーニャが当てた豪華客船での旅回が始まる。ロイドのミッション、ヨルの殺し屋稼業にも少なからず進展があるのではないだろうか。

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