※ネタバレをしないように書いています。
それぞれ秘密を抱えてる
情報
作者:遠藤達哉
試し読み:SPY×FAMILY 8
ざっくりあらすじ
豪華客船の旅行券を当てたロイドとアーニャは、しばしの休息を楽しむことになった。一方、ヨルは《いばら姫》としての殺し屋の業務で、ロイド達と同じ豪華客船に乗り込むこととなる。
感想などなど
ヨルの殺し屋としての業務は、これまであまり描かれていない。アーニャとロイドのほのぼの日常物としての地位を確立しつつある中、ヨルの殺しはほのぼのには似合わないグロさがある。
これまで処刑シーンを描いた絵画を恍惚として表情で眺めていたり、すぐに皆殺しにする選択が脳裏をよぎる辺り、殺人に快楽を感じるタイプの殺し屋だと思っていた(間違いではないだろうが)。
そんなヨルさんの殺し屋としての業務が、この第八巻ではがっつりと描かれている。殺しをする上での葛藤や、ロイドやアーニャとの生活を通じて得た殺し屋という職業を続ける意義を考え直す様が分かる。
そんなヨルの仕事の舞台は、多くの無関係な人が乗船する豪華客船。
殺し屋の仕事といっても、今回のヨルの仕事内容は、もしかしたら人を殺さなくてもいいような内容であった。具体的には『グレッチャーファミリー(マフィアのファミリー)の生き残りの護衛』。
グレッチャーファミリーというのは、代々義を持って裏社会をとりまとめていた一大組織であり、少し前の内部抗争によって、そのほとんどが殺された。唯一生き残ったのが、オルカ・グレッチャーとその息子・グラムのみ。
この親子が幸せに暮らせるよう国外へと逃亡を助けるのが、ヨルの任務である。そのため彼女は整形し姿を変え、名前も捨てた。その情報は外に漏れぬように最善の注意を払われており、最悪、一度の襲撃も受けずに豪華客船での時間を過ごせる可能性だってあった。
まぁ、そんな簡単に物事は進まない。
この第八巻の大半が、オルカ・グレッチャーを殺そうとする殺し屋集団との戦闘で構成されている。しかし舞台は一般人もいる豪華客船。敵は自分の正体がバレたところで気にせず、人々がいる場所でも平気で攻撃を仕掛けてくる。
ヨルさんの方は、夫であるロイドと娘のアーニャがいる豪華客船内で、むやみに殺しをする訳にはいかない。周囲の人に正体が悟られぬようにしつつ、殺し屋達を無力化していく。
その力業の数々は、ヨルさんが殺し屋としての腕が一級品であることの証明でもある。しかし、そのふるわれる技術の中にもどこか迷いがあった。
一方その頃、ロイドはロイドで大変だった。アーニャは母親が殺し屋としての業務に当たっていることを知っており、何とかしてその手助けをしたいと奮闘する。といっても子供にできることは限られ、ロイドから見れば不審な挙動が目立つ。
しかし娘の意味不明な言動に慣れっ子なロイドは、真面目に向き合って振り回される。アーニャとの初めての休暇を全力で休むべく、どこぞの書籍で学んだ父親としての振るまいを全力で演じる凄腕スパイの様子は、多くの読者が求めるであろうアーニャとロイドのドタバタコメディとなっている。
しかし、そのコメディ感も徐々に豪華客船の爆弾騒ぎによって雲行きが怪しくなっていく。爆弾が爆破すれば人々が死ぬばかりではなく、船が沈んでしまう。ロイドもヨルもアーニャもひとたまりがない。
それらを解決すべく、ロイドは行動を開始する。ただ彼もまた、自分がスパイであるということがバレてはいけない。アーニャもまた、自分が超能力者であるということがバレてはいけないというのは言わずもがな。
殺陣シーンとギャグシーンが交互に繰り返され、温度差が凄まじい第八巻であった。