工大生のメモ帳

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悪魔の孤独と水銀糖の少女 感想

【前:な し】【第一巻:こ こ】【次:第二巻】

※ネタバレをしないように書いています。

愛し愛される孤独の物語

情報

作者:紅玉いづき

イラスト:赤岸K

ざっくりあらすじ

黒い海を越え、呪われた島にやって来た美しい少女、シュガーリア。死霊術士の忘れ形見である彼女が出会ったのは、大罪人の男、ヨクサルであった。

感想などなど

本作を読み終えた時、最初に思ったことは「楽しむべきポイントを見誤ると楽しめない」ということであった。ここだけの話、ブログ主は楽しみ方が分からずに一度挫折しているのである。

(ブログ主が勝手に誤解した)ポイントの一つとして、本作には美しく幻想的な世界が全く描かれていないという点を挙げたい。主人公であるシュガーリアは禍々しい黒い海をわざわざ越えて、死の匂いが漂う悪魔がいるという島へ向かうのだから、美しさとはかけ離れた風景が描かれることは想像すべきだったが。

さらに、回想においてもシュガーリアが洞窟暮らしであったが故、光すらないという徹底ぶり。

もっと言うなれば、死霊術士という失われた技を引き継いでいるシュガーリアは、死霊をいろいろすることができるので、死んでいる人だったり、亡霊だったり、魂だったりが現れる。そういった死というものに関する概念的な話も多々描かれるため、勝手に「小難しい話なんだな」と判断してしまうブログ主のような阿呆もいるかもしれない。

しかし。

いざ読み進めてみると、物語の本筋というものはとてもあっさりとしていて、小難しさとは縁遠い分かりやすい話であった。

 

一度挫折してしまった原因の一つに、『主人公の目的が釈然としない』ということが挙げられる。冒頭にて「あなたを愛するために、ここまで来たんですもの」と語り、この台詞こそが、シュガーリアが島にやって来た理由であることが分かる。

しかし。この台詞、色々と突っ込み所がある。

まず『あなた』とは誰か?

この島で生きている人間と言えばヨクサルという大罪人の男だけであるため、考えるまでもなく『あなた』というのはヨクサルのことだろう。しかし、シュガーリアはヨクサルの名前も容姿も知らず、ただ『大罪人で悪魔をその身に宿している』ということしか知らないらしかった。

次に『愛するため』という言葉について。

先ほども書いたように、シュガーリアがヨクサルに関して知っていることは、『大罪人で悪魔をその身に宿している』ということだけだった。そんな男を愛することができるのだろうか? そして、愛することで何が変わるのだろうか?

 

ブログ主が作品を読み進めている間、少女にとっての『愛する』という行為は手段であり、この手段によって大いなる目的を果たそうとしているのだろう、と推測していた。

つまり、「シュガーリアはヨクサルという大罪人を利用して何かをしようとしているのだ」と。

言動の端々に優しさが滲み出て、純真無垢に見える少女が大罪人と言えど男を利用しているというチグハグ感が、どうにも違和感として心に残っていた。同作者の他作品はどれもこれも優しい世界だったため、それもまた違和感を加速させたように思われる。

しかし、そのブログ主が感じたチグハグ感というのは正しい感覚であったと後半になるにつれて分かっていく。

物語を読み進めていくと、多くの違和感というものに遭遇するはずだ。疑問点と言い換えても問題ない。死霊術士の孫娘として島にやって来たというシュガーリア、これまで愛されて育ってきたと彼女は語るが、だとすると育ててくれた親たちは今どうしているというのだろう? 死霊術士として技を行使する際、大切なものを対価として支払う必要があるという設定だが、彼女は一体何を対価としているのだろうか?

それらを解決する一つの答えは、ひどくシンプルだ。ヒントも分かりやす過ぎる程に散りばめてある。とくに考察すべき事項もパッとは思いつかない。理解するための情報は全て作品内で提示されているからだ。

何度も言うが、本作は難しい設定も、難解なストーリーというものもない。考えすぎずに違和感を受け入れながら読み進めて欲しい。この記事を見てくれた人が、ブログ主と同じように挫折の道を辿らないことを祈っている。

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