工大生のメモ帳

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葉隠桜は嘆かない 感想

【前:な し】【第一巻】【次:第二巻】

※ネタバレをしないように書いています。

魔法少女の生き様

情報

原作:玖洞

作者:つくぐ

試し読み:葉隠桜は嘆かない 1

ざっくりあらすじ

神々と契約し、魔獣と戦う力を得た『魔法少女』達は、今日も平和のために戦っている。そんな中、魔獣と魔法少女の戦闘に巻き込まれて瀕死の重傷を負った少年・七瀬鶫は、ベルと名乗る神と契約を結び『魔法少女』になった。

感想などなど

『魔法少女』ものと呼ばれる作品は、星の数ほどある。

それは言い過ぎかもしれないが、アニメ・漫画・小説・ゲームといった媒体のどれとも相性が良く、設定・世界観など多岐に渡る『魔法少女』というジャンルは、「見たことある」が多発するジャンルとも言える。

ブログ主はそれほど『魔法少女』というジャンルに造形が深くない。有名どころは見ていると思うのだが……そんなブログ主から見て、設定一つ一つにはそれほど珍しさはないが、組み合わせや語られる背景にはかなり魅力を感じた。

まず、『魔法少女』が誕生するまでの歴史についてざっくりと説明したい。

始まりは三十年前、突然に空が割れ、そこから凶暴な魔獣がやって来て人々を襲い始めたのだ。日本各地に毎日のように現れるそれは、機動隊や軍隊でどうにかできるレベルを超えていた。

ここで問題なのは、日本にしか現れなかったということだ。もしも日本だけでなく全国規模で起きている事象であれば、世界各国が協力するという未来もあったかもしれない。現実は非情で、日本は完全に世界から孤立した。下手に協力して、自国に飛び火したら嫌だとでも思ったのだろう。

自国の戦力だけでどうにかしなければならない最悪な状況、もうどうしようもないと思った矢先、現れたのが『魔法少女』だった――。

『魔法少女』という存在は、表社会に出てくることなく平和を裏で守るという作品が多いように思うが、本作はちゃんと表に出て戦うヒーローのようなポジションであるようだ。作中では魔法少女個人の専用スレッドがあり、彼女達の可愛さや強さを語り合っている。ヒーローよりもアイドルの方が近しいかもしれない。

『魔法少女』には何故美少女が多いのか、一度くらい疑問に思った方はいるかもしれない。本作はそこにも明確な理由がある。『魔法少女』になるためには、神々と契約する必要があるのだが、この契約を進めるためには神に気に入られる必要がある。まぁ、ルックスが良い方が好かれるよね、という話だ。

『魔法少女』には討伐した魔獣のランクに応じて給金が支払われる。命を賭けて戦うのだ、最低ランクの魔獣といえど、一体当たり七十万円が貰える。一日に何体も現れることを考えると、稼ぎは割と良いのかもしれない。

死と隣り合わせではあるが。

 

魔法少女になるには神に気に入られる必要があると書いたが、条件はそれだけではない。条件の全てが明かされている訳ではないのだろうが、少なくとも条件の一つに、魔獣と戦うために展開される結界の中に入ることができることが上げられる。

そんな魔獣と魔法少女との戦闘に巻き込まれ、結界の中に入って瀕死の重傷を負ってしまった者――それが本作の主人公・七瀬鶫である。ちなみに性別は男。魔法少女になる条件に性別は入っていなかったようだ。

……本当にそうか?

まぁ、そういった疑問はとりあえず置いておこう。七瀬鶫は間違いなく男でありながら、結界の中に入ることができたし、現に神と契約して魔法少女になることに成功してしまったのだから。

そんな風にして男を魔法少女にした神はベルと名乗った。彼の話している内容を聞くに、一人思い当たる神がいるが、外した時が恥ずかしいので黙っておく。とりあえず本作に出てくる神は、日本神話からギリシャ神話、北欧神話に至るまで多岐にわたるとだけ言っておこう。

そんな七瀬鶫の魔法少女としての名前が、葉隠桜なのである。

 

こうしてベルと七瀬鶫の二人三脚、魔法少女活動が始まった。

ちなみに魔法少女には戦闘などに役立つスキルが付与される。葉隠桜の場合、【転移】と【糸】と【暴食】の三つ。【転移】はその名の通り、狙った物体を瞬間移動させることができるスキルだ。自分も瞬間移動が可能になる超便利スキルだ。【糸】は、自分の身体から自在に糸を生成し、それを操ることができるというもの。他作品の名前を出すのは憚られるが、ONEPIECEのドフラミンゴが食ったイトイトの実を想像して欲しい。【暴食】は倒した魔獣を捕食し、自身の肉体を強化できるというもの。これが中々にグロい。

こうして列挙してみると汎用性のあるバランスの良いスキルと言えるのではないだろうか。彼とベルの二人三脚で、魔法少女としての活動が始まった。ただ魔獣討伐を繰り返しているだけ……しかし、不穏な影がちらつく裏では何かが始まろうとしていた。

プロローグ、世界観説明といった赴きが強い第一巻。次への期待が膨らむ物語であった。

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