工大生のメモ帳

読書感想その他もろもろ

【漫画】賭ケグルイ1 感想

【前:な し】【第一巻】【次:第二巻】

※ネタバレをしないように書いています。

賭け狂いましょう!

情報

原作:河本ほむら

作画:尚村透

試し読み:賭ケグルイ 1巻

ざっくりあらすじ

名門・私立百花王学園には、厳しい階級制度があり、それを決めるのはギャンブルの強さであった。勝てば名誉と金が手に入り、負ければ家畜として扱われる。そんな学園に転入してきた蛇喰夢子は、転入して早々にギャンブル勝負を仕掛けられてしまう。

感想などなど

ギャンブルに強い人間というのは、一体どのような人間なのか。

ギャンブルというのは本来、運否天賦に身を任せて、背負ったリスクに見合うリターンを受けられることを願うゲームだ。「どんな戦いであっても負ける可能性がある」ということを念頭に置き、あくまで運によって勝敗が決まる。

名門・私立百花王学園は、階級制度がある。

学園のトップには生徒会があり、学生はそれぞれ上納金を毎月納める。納めた上納金の額に応じて、不定期にランキングが発表される。そこで下位100位になると「非協力傾向生徒」に認定され、通称「家畜」と認定され、上に逆らうことは絶対にできない。

ただでさえ金持ちが通う学園だ。上納金の額はバイトでちょっと働いて払える額ではない。

どうしたってギャンブルを通して、安定して稼ぐ必要を余儀なくされる。

しかし先ほども説明した通り、ギャンブルというのはその場の運。勝ち続けることなど、本来は不可能である。それでも生徒会役員達はギャンブルにおいて強者であり、家畜に落とされてくないと奮起する一般学生も、勝ち星を積み重ねている。ギャンブルにおいて常勝というのは、あり得ないはずなのに。

……あぁ、大事な前提を忘れていた。ギャンブルにおける運要素をゼロにするイカサマを、学生達は当たり前に使っていたということを。ギャンブルをしている相手がイカサマをしていた、それによって負けた――その時、だまされた方が悪いと周囲に見放され、家畜に落ちた学生はたくさんいるのだろう。

本作「賭ケグルイ」においては、イカサマを見抜く力というのが重要視されている。主人公・蛇腹夢子の場合、相手が用意したゲーム、言い換えると「相手がイカサマを周到に準備したゲーム」に挑んでいくというケースが多く、「そのイカサマを見抜き」「逆に利用して勝つ」という王道の勝利パターンを積み重ねていくこととなる。

 

記念すべき第一ゲームは『投票ジャンケン』。

これは、クラスメイト30人に協力してもらって行う、一対一の対面型のゲームとなっちている。

手順としてはまず最初に、クラスメイトである30人それぞれに、グー・チョキ・パーのいずれかをカードに記載してもらい、それらを集計。プレイヤーはそれら計30枚の中から、ランダムに3枚のカードを抜き出す。

そうして作った手札3枚の内、1枚だけを選んでジャンケンをする。あいこならば残り2枚から選んで再度ジャンケン。3回ともあいこだった場合は引き分け。お金に関しては、ジャンケンを開始する前にチップをベット。勝った方が総取りだ。

『イカサマがない』場合、自分の3枚の手札から30枚のカードに何が偏っているかを推測し、何を出すべきか考えるのが王道だろう。蛇腹夢子にこのギャンブルを持ちかけた早乙女芽亜里が、何も考えず運だけのゲームにするだろうか? いや、そんなことはない。

クラスメイト30人が関わってくるこのゲーム。イカサマを仕組むのは無理なように思われる……しかし、それは認識が甘い。イカサマはある、という前提で本作は読み進めることをおすすめする。

第二ゲームは『ダブル神経衰弱』。

これは説明が楽でありがたい。シンプルにトランプのデッキ2つを場に広げ、マークと数字が一致するペアを記憶を頼りに当てていくというものだ。勝った方が互いにベットした金を総取りする。

このギャンブルを仕掛けてきた皇伊月は、当然ながら『イカサマ』をしている。そのことはゲームの流れを見ていれば明らか。それを真正面から切り崩して、大金をせしめる蛇腹夢子の力業は見物である。

 

本作に頭脳戦を期待していた場合、少しばかり肩透かしを食らうかもしれない。特に『ダブル神経衰弱』などは頭脳戦の要素は欠片もない。『投票ジャンケン』も結局は運が良かった(かなりの確率で早乙女が勝っている勝負だった)。そもそも蛇腹夢子という人物が、頭脳戦を求めていない。

相手の『イカサマ』を見抜き、それを利用して運ゲーに持ち込む。一度たぐり寄せた幸運は逃さない――これが彼女の勝ち方だ。一歩間違えば負けるかもしれない、その緊張を楽しんでいる彼女の狂気が、本作の大きな魅力なのではないだろうか。

【前:な し】【第一巻】【次:第二巻】