※ネタバレをしないように書いています。
負けたらゴミだ
情報
作者:福本伸行
試し読み:賭博黙示録カイジ 1
ざっくりあらすじ
自堕落な生活を送っていた伊藤開司は、かつて保証人になった借金を押しかけられてしまう。その借金を一括返済するため、ギャンブル船「エスポワール」に誘われるがまま乗り込むこととなる。
感想などなど
本作の知名度はとても高く、アニメと実写の両方で成功を収めている。見たことはなくとも「名前だけは知っている」という方も多いのではないだろうか。かくいうブログ主も、漫画を読む前に映画を視聴しており、作中で行われるゲームは把握しているつもりだった(アニメは未視聴)。
実写映画は原作を知らずとも楽しめる名作だったと思う。漫画原作の実写は駄作になることが多い中、かなり珍しい成功例ではないだろうか。そんな状態で漫画を読むと、映画では様々な部分をマイルドに描写していたのだな、というのが第一に抱いた感想だった。
本作は自堕落な日常の一幕からスタートする。金がないのにギャンブルに手を出し敗北。どうすればいいのか自問自答し、「働けばいい」と解を出していながら働こうとしない。違法駐車してあったベンツのエンブレムを奪い取る趣味に精を出している。
何も積み重ねようとはせず、他人の足を引っ張ることに尽力し、一発逆転のチャンスが降ってくることだけを期待する無意味な時間が過ぎていく。開示という男の人となりを、しっかりと描写している。
そんな開示はいきなり、385万の借金を抱えてしまう。1年ほど前、バイト先で知り合った後輩に借金の保証人になるように頼まれていたのだが、どうにもその後輩が失踪したらしい。1円も返済していなかった後輩に代わり、全額を開示が支払わなければならなくなったという訳だ。
ただでさえ働いていない男・開示。返せるわけがない。
そんな首が回らなくなった屑が集まり、一発逆転を狙うギャンブル船「エスポワール」に、乗るように誘導された開示。そこで始まるのは、シャバで負けた物達の最終戦である。
開示と同じように返済できないような多額の借金を抱えた物達が集い、やることになるゲームの名前は『限定ジャンケン』。
このゲームはグー・チョキ・パーのいずれかが書かれたカードを使う。プレイヤー全員にはまず、グーのカード4枚、チョキのカード4枚、パーのカード4枚の計12枚が配布される。
ゲームが始まると、双方の合意の元で対戦相手を決める。そして自分が持っているカードから1枚を提示、カードに書かれたジャンケンの勝敗に応じて、それぞれが持っている『星』が移動する。ジャンケンで勝った場合、敗者の『星』を1つ奪うことができる。あいこだった場合は『星』の移動はない。
勝負に使ったカードは捨てる。こうして自分のカードを使い切ったタイミングで、持っていた『星』の個数が3個以上だった場合に勝利となる。『星』に関しては、ゲーム開始前に全員が3つ貰っており、もしも途中で『星』がなくなったら強制退出、多額の負債を背負うこととなる。
他にもジャンケンを始める前には「セット」という掛け声を言うといった細々としたルールはあるのだが、ざっとこんな感じだ。『星』がなくなったら敗北なため、いきなりジャンケンで3連敗して退出という可能性もある。仕掛けどころや、後々のことを考えたカードの選定など難しいゲームといえる。
このゲームの肝はどこか。
『限定ジャンケン』は五巻まで続くため、第一巻時点ではさほど進展はない。ただゲームを勝ち上がるために大事なヒントは、至る所に散りばめられている。
まず、かつて「エスポワール」に乗って生還したことがある船井は、このゲームには必勝法があると語る。勝利条件が「カードを使い切った時に『星』を3つ持っていること」とあるのだから、ジャンケンで勝つ必要はなく、あいこをし続ければ良いと言うのだ。
……まぁ、確かに、理論上はそうだ。あいこであれば『星』の移動はなく、初期値である3つを維持し続けた上でカードを使い切ることができれば勝てる。だが、このゲームは勝って金を稼ぐことに躍起になった物達が集うギャンブル船。
思惑通りに物事が動くはずがない。
開示はこのゲームをクリアすることができるのか。誰も信じられない心理戦が始まる。